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2016年5月3日
著者のスヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチは、1948年ウクライナ生まれのジャーナリスト・作家であり、2015年にノーベル文学賞を受賞した。著者の作風は、ジャーナリストとしての経験を活かした記録文学である。本書は、白ロシア(現ベラルーシ)の子供たち101人が第二次大戦中に経験した体験を、聞書きとしてまとめたものである。戦争当時(1941年)の子供たちの年齢は3歳から15歳、最も多いのは10歳前後である。本書が残した過酷な子供たちの体験は、現在読んでも辛くなる。たまたま、東京新聞が連載している「平和の俳句」で、「戦争は大人が子供を殺すもの」(2016年4月25日掲載、中村裕さん作)を読んだが、この句が本書の内容を簡潔に表現しているように思われた。

第二次世界大戦開始後の1941年6月22日、白ロシアにドイツ軍が侵入した。以後、白ロシアは独ソ両軍の主戦場となり、侵攻したドイツ軍は白ロシアの地を徹底的に破壊した。こうしてのどかな農村地帯だった白ロシアは一気に地獄のような混乱に陥ったのである。この地獄はソ連の反撃によりモスクワ郊外からドイツ軍が大混乱の中を撤退した12月まで続く。本書は、この地獄を体験した子供たちの証言である。子供たちは、恐怖や飢餓の中でも母親の存在に救いを求め、兄弟姉妹たちの安否に心を痛め、また戦地の父や兄の帰還を祈る。混乱の中でも、迷子になった子供たちに救いの手を差し伸べる人々の存在に救われる思いがする。過酷な体験をして生き延びた子供たちの何倍もが戦争で殺されたことを忘れてはならない。

日本でも本書のような体験をした子供たちは多かったはずである。唯一の陸上戦が行われ、住民の四分の一が死亡したとされる沖縄戦、広島・長崎の原爆、日本全国の空襲など。戦後70年の間、日本の子供たちが戦争に巻き込まれなかったのは稀有といわなければならない。しかし、世界を見渡せば、本書のような子供たちの苦難をもたらす戦争が絶えない。特に難民としてヨーロッパに逃げ惑う中東の子供たちの姿ほど心を痛めるものはない。「戦争は大人が子供を殺すもの」を銘記して、日本が戦争に巻き込まれる事態だけは何としても避けなければならない、と本書を読み痛感した。
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