カスタマーレビュー

2014年6月18日
 初めて手に取る作家の本。特攻の歴史を調べていることもあって、勧められるままに読んだが、途中で読む気が失せた。なんとか最後まで読み切ったけれど、設定から、展開まで大筋はあからさまに浅田次郎の『壬生義士伝』、坂井三郎の『大空のサムライ』の使いまわし。城山三郎『指揮官たちの特攻』なども参考にしていると思う。文章、せりふまで同じ箇所があるのは、オマージュの次元なのか。
 内容そのものが悪いとは言わない。特攻の歴史を知らない人のきっかけとしてはいい。感激するならそれも構わない。自分も予備知識がなければ、どう読んでいたかはわからないので…。ただ、知った上で読んだ以上、作詞などの引用はさんざん叩かれるのに、これが許され、映画やドラマにまでなるというのはどういうことなのだろう。「感動的」と言われるのは、引用している作品が優れているから。現実の死の力を借りているから。筆者はそれを筆力や取材で昇華しようとはしていない。編集を拠り所にした、ヒロイックな演出や自己陶酔が登場人物の安っぽさから浮き上がるばかりで、テーマの重みに真正面から向き合う真剣さが全く伝わってこない本だった。
 売名や利益のためのお手軽な「感動」として書かれたならば、さまざまな思いを抱えて散った方たちは浮かばれないだろう。そして中身がどうであれ、何も考えずに、その場限りの「感動」を求め、涙しておしまいなら、反応するだけの薄い感性が年齢を問わず満ち溢れているということだ。それで出来上がった「感動作」は見透かしている作り手とそれでも構わないとする読み手の予定調和、なれ合いでしかない。  
 本屋大賞にどうして選ばれたのか、売れればいいということなのか、なぜ憲法問題で揺れている今この本なのか、これで何を伝えようとしているのか。そういう意味ではいろいろと考えさせられる本ではあった。
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