カスタマーレビュー

2012年10月29日
吉本隆明さん自身による“吉本ガイド”のように読める本。初期三部作(言語にとって美とはなにか、共同幻想論、心的現象論)のような理論的なものではなく、現代社会を乗り切るための、『アフリカ的段階』以降の思索が披露されています。“アメリカはオカシイ”からはじまってラストは“シェアハウスに期待する”的な言葉…。シェアハウスという言葉は出てきませんが「三人ぐらいでつくる集団」に期待する、「そういうことでしか可能性はない」という強力なプッシュが印象的なラストです。

フーコーを「まったく独立派だった」、シモーヌヴェイユを「単独者として自分の考えを述べていく」人と紹介。「単独者」はもともとフーコーの言葉ですが、吉本さんにとってはひきこもりからフツーの人や思想家までつらぬく大切な定義。単独者同志が小さな集団を作る…というと攻殻機動隊のスタンドアローンコンプレックスを思い出しますが、それっていいんじゃないかっと思えたりもします。

いちばん難しい問題として指摘されているのが現在のネット社会を前提としたもの。先端技術のおかげなどで簡単に成功やお金に結びつく可能性とそのためにコツコツやっていく事がおろそかになっているという両極に覆われてしまっている社会について…。これらの現代の格差などの問題の解決は…政党をはじめインテリ?が何か(上から)指導したりすることにも否定的で“社会を変えるには下からがいい”と吉本さんの根本的な思想が炸裂してる感じで、元気です。

憲法9条をめぐる言葉では吉本さんの思想の最大の特徴である対幻想と共同幻想の差異からハッキリとした解釈がされ、9条の価値と、9条でも介入できない対幻想の世界観が述べられています。

専門用語などがなくて読みやすく、しかも吉本さんの思想と現代社会の問題の解決の可能性がつかめる一冊といえます。『言語にとって美とはなにか』を「わらない」といったり、『アフリカ的段階』を「奇書」と呼んだりした人たちの感想はどんなものなのかな、と思いました。
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