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Customer Review

VINE VOICEon March 31, 2015
本書はキリスト教の所謂Q&A式の解説書である。この手の本は非常にありがちなもので、特に宗教になると充実している傾向があるが、本書の特別なところは、「徹底性」であり、「包括性」「網羅性」「広範性」であり、もっと単純に言えば「分厚さ」であると言えるだろう。2013年(なかなか最近である!)に増補版が出された本書は340頁を越える分量で、目次を見るだけでも、その執拗なまでの論点・質問選択の徹底性と広範性に眩暈がすると同時に純粋な感動を覚える。勉学の初歩的段階ではこの種の本は十二分に役立つため、私は幾らか類書を漁ったが、本書ほど徹底していて分厚く、色々な意味で力の入っている本は、それほど多くは見かけない。期待以上の代物であり、キリスト教の事は全然よく知らないが基本から知ってみたいという入門者には是非読書を推奨したい。

本書の面白い所・魅力的な所は書名に「ぶしつけな240の質問に答える」とあるように、実際のキリスト教徒やキリスト教を教える先生には質問するのを少し(かなり?)躊躇ってしまうような容赦のない質問、直接的な疑問、徹底的に懐疑的な意見、攻撃的な批判が、躊躇なく多数取り上げられている所であると思う。別に宗教を敵意を持って攻撃すれば良いわけではないし、必ずしもそうしたいわけでもないのだが、しかし本当に厳密にキリスト教などの宗教を、まだ信仰を持っていない人が一から十まで知ってみたいと思えば、やはりどうしても自然にあれこれ厄介な疑問を投げつけてみたくなるものである。それは宗教に対する差別的攻撃心などなくても、普通の好奇心や知識欲があれば、いや、「単にちゃんと知ってから正確に判断したい」という健全な願望だけがあれば、自然と必要になってくるものなのではないか、と思う。本来なら、キリスト教について熟知している信者に、何でも遠慮なく聞けてしまった方が良いのではないか。少なくともまだ信仰を持っていない人々はその方が助かるわけである。だが、信仰を全く持っていない自分と同じような人には質問しても得るものは少ないし、信仰はなく客観的に解説してくれるが非常に知識を持っている専門家のような人は必ずしも身近にいるとは限らない。(大学にいる事も少なくないが、いない事もある。)仮に信仰のある知人や友人、あるいは先生などがいたところで、実際に面と向かうと、疑問に思う事を一から何でも徹底的に聞いていく、というのは、かなり難しいものである。心理的にも難しいし、時間的にもかなりの負荷をかけてしまう。世俗的な学問の純粋な質問ですら、あんまり質問攻めにすると人はウンザリするものであり、先生でも「もういいだろ!」という顔をするものである。だが、これは単なる礼儀の問題ではなく、「そうか、こんな質問攻めは失礼なんだ」などと納得して何も聞かないままにしておくと、是非とも知りたいキリスト教に関する初歩的な疑問が全然答えられないまま残ってしまい「結局キリスト教ってよく分からないものなんだな」という事で終わってしまいがちだ。

以上のような事情に鑑みると本書のような本の存在は大変有用で有意義で心強いものである。本書は必ずしも専門的に高度な話題を高度に学問的な仕方で扱っているわけではなく、どちらかというと、いたって素朴な基本的疑問を徹底して扱っていくような具合なのだが、そのような本書で取り上げられていない初歩的基本的疑問は見つける方が難しい。つまり、普通の素朴な無信仰者が思いついて聞きたくなるような、自然と知りたいと思うような疑問は、殆どが網羅的に扱われている。痒い所に手が届きまくるQ&Aである。あまりに扱い過ぎて時々明らかな重複が見られるほどだ。(つまり同じような質問に何度も何度も答えているような部分もある。これも力が入っている証拠かもしれない。)本書を通読すれば必然的にキリスト教の内容や性質、発想の「基本」はかなり理解する事ができるようになるだろう。

またこの手のQ&A本にはハッキリ言って「ショボい」本が多い。せっかく核心的で極めて大切な質問をしているのに、答えてるんだか答えていないんだか分からないような、話を逸らすような、誤魔化すような簡潔すぎる単純な回答が一言あるだけで、モヤモヤが全くなくならないどころか増えていく、というような本も数多いのだ。実は本書も膨大な質問を取り上げている分、一つ一つの扱いは拍子抜けするようなものばかりなのかもしれない、という恐れがないではなかったのだが(実際目次を見れば殆どの質問は短い頁数で処理されるため、当初その予感を強化してしまった。)実際に読んでみると、本書は回答においても(良くも悪くも)驚くほど力が入っている。文字通りぶしつけな質問に、ガチガチのキリスト教徒が全力で立ち向かっていくような調子であり、なかなか読み応えがある。勿論全てがそうだというわけではなく、多少の逃げを感じる箇所も絶無ではないが、基本的に著者はかなり真摯に真面目に勇気を持って、根本的な疑問の数々に、逃げずに真っ向から答えている、と言って良いと思う。

かかる本書は既に述べた事だが、思った以上の良質なキリスト教入門として完成されている。この種の本を求めている人には間違いなく最適な本の一つだろう。無論、信仰のない人間からすると(私はキリスト教徒ではないだけで、信仰のようなもの自体はないでもないのだが)説得力を感じられない箇所や、反論したくなる箇所は少なくないどころか、かなり多いかもしれない。本書を通読する事でキリスト教の理解は深まるだろうが、結果的にやはりキリスト教は駄目だ、という結論を読者が得る可能性もあるだろう。著者は全力で説得しているが、残念ながら読者が実際に説得されるかはまた別の問題であろう。だがキリスト教について何も知らずに何となく避けるような段階から、キリスト教をよく知った上で同意はできないという段階に進むなら、それは意味のある事であるし、著者も必ずしも嫌ではないのではないか、と思う。
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