カスタマーレビュー

2009年6月9日
文庫版は基本的に単行本の内容を収録するものだが、本書は文庫化にあたり全面的に改定したとされる。単行本と文庫版の相違を比較するのも一興である。一例を挙げれば大企業と暴力団の癒着についての記述が以下のように異なる。
・単行本「東急コンツェルンが広域組織系フロント企業との仕事を通じ、コンツェルンそのものが広域暴力団組織に乗っ取られそうになった」(244頁)。
・文庫版「某コンツェルンが広域組織系フロント企業との仕事を通じたつきあいから広域暴力団組織に乗っ取られそうになった」(262頁)
単行本では東急コンツェルンと企業名を明記していたが、文庫版では某コンツェルンに後退した。ここからは日本の裏社会の闇の深さが浮かび上がる。広域暴力団関係者が1989年に東京急行電鉄の株式を大量に買い付けた事件は大きく報道され、今更隠すような性質の話ではない。
しかし、バジリコという2001年設立の新進の出版社では自由に書けた内容も、日本を代表する文庫である新潮文庫では遠慮すべきこともある。「私服捜査官として刑事警察や公安警察に所属」(著者紹介より)し、裏社会に精通した北芝氏にとって知っていても書けない内容は少なくない筈である。文庫版で一見後退した表現に変更されたという事実が、かえって「政権与党そのものがヤクザとべったり」(262頁)という暴力団に汚染された日本社会の病巣を実感させられる。
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