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カスタマーレビュー

ベスト1000レビュアー2016年10月14日
 20世紀前半までのローマ帝国史の時代区分は概ね3つに分かれていました。共和制ローマによる属州支配/元首政/皇帝専制時代です。終焉も西方ローマ帝国の崩壊と西方におけるローマ的世界の消失を蛮族侵入に置くという大変わかり易いものでした。この歴史像は、帝国の変質過程である2-4世紀の史料の希少性、4世紀以降に増大するキリスト教会文献と5-6世紀に編集されたローマ法、エジプト出土のパピルス文書群など若干偏った史料から導き出された、政治・軍事・法制史によるマスターナラティブで、一般的には今もって影響力を保ち続けています。

 対して20世紀後半は、各地での考古学的発見や膨大な新規出土碑文群などを活用した社会史的研究が進み、帝国内の地域の相違や元首政からの連続性が強調されるようになってきています。統治体制はアウグストゥスやディオクレティアヌス改革で突然革命的に変化したわけではなく、蝉が脱皮するごとく、既存制度を擬制として利用しながら、全国一律に制度改革を行なうのではなく、必要に応じて抵抗少なく適用出来る地域や都市や官職から順次行い、百年単位というゆっくりとした時間をかけて実質的に新しい体制に脱皮していった様子が明らかになりつつあるのが昨今の状況です。

 本書はこの流れの中にあって、統治における地方と中央の関係に関してディオクレティアヌス時代(コンスタンティヌス時代も含む)のスナップショットを描こうとしたものです。重要な点は、「地方」とは中央との対置のために抽象化/一般化された”地方”ではなく、現在のイタリア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/スペイン/フランス/英国という、ラテン語圏西方ローマ地方全部を描いており、しかも出土したラテン語碑文という同時代史料を用いている点で、まさに対象時代と地域の空間全部のスナップショットとなりえている点です。

 今後の帝政ローマ史は、本研究のような、50年単位くらいでの全土満遍ないスナップショットを、統治制度だけではなく、農業はじめ各種産業や景観/地域言語/都市/宗教/心性などについて取得することで、2-5世紀にわたる400年間の時空間内における見えにくい変動を明らかにすることができるのではないでしょうか。こうした研究の蓄積の上に、ローマ帝国衰亡論と変容論の決着が見えてくるのではないかと思います。そうして本書でも示唆されていますが、西方ローマがあっさり蛮族支配を受け入れたのは、軍事的な問題だけではなく、住民の心性の問題にもあったのではないか、というような点も、より解明されていくのではないかと思います。

本書は確かにラテン語官職名やマイナーな地名を理解していないと本文に集中できない、という一般読者には少々高いハードルもありますが、そこさえ乗り越えれば、一般読者にも面白く読める書籍だと思います。この点で2点、特徴があります。

1.著者は雑誌論文等に掲載された碑文を解析しているだけではなく、多くの碑文に関し実際に読みに現地に出かけて実見しているので、碑文が置かれた遺跡や環境が言及され、読者に地方性・現地性を実感させてくれる点。

2.各地遺跡研究本は、遺跡紹介本という印象が強いのですが、本書では、遺跡に置かれた碑文を読み解くことで、遺跡に喋らせることに成功していて、遺跡研究と文献研究の間を碑文研究が橋渡しすることができることを効果的に示している点。

なお、本書はラテン語碑文研究なので、西方ローマしか扱っていない点は残念です。著者はあとがきで、「地中海世界東部についても調べてみたい」と記載していて、2014年に『リキニウス統治下のドナウ川流域諸州と軍隊』(検索するとpdfが読めます)という論説を書かれています。東方ギリシア語圏でもラテン語碑文は西方に比べれば少ないにしても出土はしているので、ぜひ東方世界の碑文も研究して欲しいし、願わくば、ギリシア語圏の研究者に、本書と同じ方法論でディオクレティアヌスとコンスタンティヌス時代のギリシア語碑文を用いた統治のあり方の研究を出して欲しいと願う次第です(30年以内くらいに)。

碑文といっても各種あり、建築/奉納/顕彰碑文は、「誰が、誰(神も含む)に対して、何を、誰の手(実行者)によって建てたか」を解析することで多くのことが読み取れる、ということを本書により知ることが出来ました。著者も一部表にして整理していますが、読み飛ばしてしまうと印象しか残らないので、再読する時に表にして整理したいと思います(私にとっては今後何度か読み返すであろう書籍となりました。著者の今後の研究も楽しみです)。
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