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カスタマーレビュー

2017年1月29日
前回の芥川賞を受賞した『コンビニ人間』が稀に見る傑作だったので、
今回受賞した『しんせかい』も読んでみることにした。
芥川賞受賞が発表されて、一週間ほどはどこの書店にいっても見当たらなかったのだが、ようやく手に入れた。
一読したときは、なんでこんな駄作が受賞したのかわからない、芥川賞はやはりあてにならないな、などと思った。
第一に、文体があまりにもあっさりしすぎていて、描写不足。
第二に、魅力的な人物は登場するのだけど、どうでもいい人物に紙幅を割いたために、掘り下げられていない。
『コンビニ人間』で展開されたような濃密な世界はちっとも感じられなかった。
しかし、いつもの通りちょっとした感想文を書き留めていると、徐々にこの作品が何を表象しているのか
わかりかけてきた。そういうわけで作品に対する評価も改めることになった。

今にしてみれば、あらすじにきちんと書いてあるのだが、この作品は”思い出すことの痛み”を描いたものだと思う。
私なりに言い換えれば、”追憶の欺瞞”、つまり記憶を辿ることに付き纏う噓臭さ、となる。
この作品は、そのとき目の前にある事物を無骨に書き並べたような文体で書かれている。
だから現在進行形で語られている物語だと勘違いしそうであるが、注意深く読めばそれが誤りであることがわかる。
この主人公は、【谷】での出来事を、少なくとも数年後ぐらいに回想する形で物語っているのだ。(もちろん数年後というのは憶測だ。)
見方を変えれば、主人公は”現在”(物語っているまさにその時)、【谷】での出来事の記憶を呼び覚まさそうとする、
やむにやまれぬ内的なニーズに駆られているのであろうことが推測できる。
これは多くの人間にとって他人事ではない経験だろう。遣る瀬無い苦しみに襲われているとき、私たちは様々の思い出に縋りつきたくなる。
ところが、主人公は、外的な事象のつまらない記述(犬の鳴き声とか、人が持っていた物とか)にばかり終始して、
追憶というものの肝心かなめである、内的な思考や感情を復元することにはことごとく失敗している。
そして、主人公はそのことに自覚的である。

  「けいこがいった。ジマさんは緊張していた。タチさんも緊張していた。ぼくはどうだっただろう。
  ロペスの吠えたのは耳に残っている。藤田さんが鉤爪のついた棒を持ってあらわれたのもおぼえている。
  しかしそれらを耳にし目にして起きた、自分の中に起きたことを、ぼくはおぼえていない。」

だが、この作品を読んで静かに自省するとき、自分もまた主人公よりも巧みに追憶できる自信などないことに気づく。
それは自分に都合よく潤色され、気に入らない部分は廃棄され、尾ひれも背びれも胸びれも尻びれも付き放題に付いたものだ。
主人公も、物語っているうちにそのことに気づいてしまったのだろう。作品はこんな風にいかにも唐突に閉じられる。

  「どちらでも良い。すべては作り話だ。遠くて薄いそのときのほんとうが、
  ぼくによって作り話に置きかえられた。置きかえてしまった。

  それから一年【谷】で暮らした。一年後【谷】を出た。」

これが「まとも」な小説であれば、残りの一年の出来事も物語ることだろう。
しかし、追憶の欺瞞に気づいてしまった主人公には、もはやいけしゃあしゃあと過去を語る=騙ることなどできなかったのである。
私には、主人公の(作者の)この姿勢をとても勇敢で誠実なものだと思う。
「まとも」な小説の「まとも」な語り手であれば、追憶の欺瞞に気づかないか、気づいたとしても黙殺する。
ところが、山下スミトは(山下澄人は)、それと真っ向から向き合って決して目を背けなかった。逃げなかった。
私はその気高い姿勢に敬意を表したいと思う。

でも、タイトルの意味だけはいまだにわからない。
「しんせかい」とは【谷】のことか。あるいは、主人公が今生きている現実か。
それとも、いつか訪れる日を待ち焦がれるばかりの未知の世界のことか――
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