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カスタマーレビュー

2013年10月27日
「日経BPクラシックス」の新訳『資本論』(中山元訳)で売り物のひとつとなっているのは、これまで「剰余価値」と訳されていた語を「増殖価値」と改めたことだ。「訳者あとがき」によると、「MehrwertのMehrは、たんなる剰余ではなく、増えた部分という意味だから」という。これに対し、かえってよくわからないという意見もあるようだ。評者も剰余価値のほうがわかりやすいと思うので、ここではその言葉を使うが、しかしまあはっきりいって、訳語の問題などどうでもよい。ぜひ知っておかなければならないのは、次の二点だ。(1)剰余価値とは現実にはありえないトンデモない概念であること(2)そういうありえない概念を土台に据えた『資本論』は破綻していること――。以下説明しよう。

『資本論』は全三巻(一巻分だけで文庫本数冊にもなる)で構成されるが、1867年に出版した第一巻で、マルクスはこう述べた。商品の価値はすべて労働によって生み出される。そしてこの価値どおりに市場で交換(売買)される。ところが資本家は商品を売って得た代金のうち、労働者にはその一部を賃金として支払うだけで、原材料費などを除いた残りは利潤として自分の懐に入れてしまう。言い換えれば、労働者が生み出した価値のうち一部には対価を払うが、残りの価値(剰余価値)には払わない。これは実質的な不払い労働であり、不当な搾取である、と。

だが私たちがよく知っているように、実際には、どれだけ大きな利潤を得ることができるかは労働だけでは決まらない。他の要素としてもっとも重要なのは、機械や道具といった生産設備だろう。生産設備は労働者のものではない。資本家のものだ。そうだとすれば、賃金を払った残りを資本家が取っても、搾取などと非難される筋合いはないはずだ。

もちろんマルクスは、資本家を擁護するようなそんな理屈は認めない。代わりにこんな主張をした。剰余価値(利潤)を生み出すのは労働だけだ。生産設備が剰余価値(利潤)を生み出すことはない、と。

これには明らかに無理がある。もしマルクスの言うとおりなら、大規模な設備を使う資本集約型産業より、サービス業など人手を要する労働集約型産業のほうが利益率が高くなるはずだ。しかし実際にはそのようなことはなく、長期ではあらゆる産業の利益率は均一化に向かう。なぜならある産業の利益率が他より高ければ、その産業に参入する企業が増え、価格競争が激しくなって利益率が低下するからだ。

マルクス自身、『資本論』第一巻の中で、この矛盾を認めていた。そして矛盾の解決をあとで示すと約束した。だが第一巻を出版した後、続きをいつまでも出さないまま、十六年後の1883年に死んでしまった。

あとを引き継いだのは盟友エンゲルスである。マルクスの遺した草稿をもとに、第二巻を1885年に出版した。しかしこの巻で矛盾の解決は示されなかった。読者が不審に思うことを警戒してか、エンゲルスは序文(岩波文庫版第四分冊に収録)で、解決は最後の第三巻で示されると予告した。そして経済学者たちにこんな「挑戦状」を叩きつけた。この矛盾をどう解決するかわかる者があったら、第三巻が出版されるまでに見せてもらいたい、と。

さらに九年後の1894年、残りの草稿やメモを取りまとめ、ついに第三巻が出版された。エンゲルスはまた序文(岩波文庫版第六分冊に収録)を書き、前巻での「挑戦状」に応えて多数の論者が矛盾について論考を発表したが、どれも的外れだったと勝ち誇った。それではマルクス自身は、第一巻の刊行から三十年近くたってようやく出版された第三巻で、どのような解決を示したのか。驚くべきことに、何の解決も示さなかったのである。

マルクスは第三巻で、みずからの論理的破綻をいさぎよく認めたわけではない。さも当然のように、商品はそれに投じられた労働に比例した価格で売買されるわけではないと述べているだけだ。そうでなければ、各産業の利益率が均一化に向かうという現実を説明できないからだ、と。しかしこれは明らかに、第一巻で述べた剰余価値説を放棄したものだ。

オーストリアの自由主義的経済学者、ベームバヴェルクは第三巻が出た二年後の1896年、『資本論』の論理的不整合を批判する『マルクス体系の終結』(木本幸造訳、未来社)を上梓し、「マルクスの第三巻は、その第一巻を否認している」(邦訳書60頁)と指摘した。当時マルクス主義を奉じていたゾンバルトでさえ、こう述べている。「いま与えられている……《解決》を、たいていの人びとは、少しも《解決》とみなしたくないであろう」(同61頁)

これは小さな問題ではない。もし剰余価値説が間違っているのなら、それにもとづき展開された「資本家は労働者を搾取している」という主張も間違いということになる。ベームバヴェルクは『資本論』のことを「カルタ札で組み立てられた家」(同199頁)、つまり砂上の楼閣と痛罵した。

マルクスが第二巻以降を生前出版しなかったのは、この破綻が修復不能と気づいたからだろうともいわれている。だが人間とは論理明晰な読みやすい本よりも、矛盾を晦渋な文章や思わせぶりな数式でとりつくろう、一見壮大な砂上の楼閣にこそありがたみを感じるものなのかもしれない。「危機のたびに甦る この難解さ、この面白さ!」という新訳本の帯のキャッチコピーを眺めていると、そんな苦い思いがこみ上げる。
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