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カスタマーレビュー

2011年8月24日
暴行などを用いて女性を姦淫した場合,強姦罪の既遂が成立する(刑法177条)。この「姦淫」とは,男性器の少なくとも一部が女性器に挿入されることだ,というのが大正時代からの判例・実務・学説の立場だ。姦淫に至っていなければ,未遂罪(179条)が成立しうるにすぎない。そうすると,たとえば「強姦しようとした犯人が,姦淫の直前に被害者からの口淫の申出に応じて姦淫を止めた」(p.9)場合には,強姦未遂罪が成立するにとどまることになる。

著者は,判例を批判して,この場合にも強姦の既遂を認めるべきと述べるが(p.12),妄言としか言いようがない。

というのも,未遂犯とは,(既遂に至らなかった)不完全な犯罪という意味ではない。これはよく誤解されている点だが,未遂犯は,1つの完全な犯罪であり,「半分は無罪」というわけではないのである(同様の誤解は,「過剰防衛」(36条2項)にもみられる。これも純然たる犯罪だ。これに対して,正当防衛(36条1項)は完全な無罪だ)。未遂だろうが既遂だろうが,“強姦”という犯罪は成立しているのである。どちらが成立するのかをことさらに議論するのはナンセンスだ。

いや,そうではなく,未遂だと刑が減軽されるからだろう?――これも批判として不十分だ。なぜなら,たしかに未遂なら刑の減軽が「できる」(43条本文)が,これは裁判所の裁量だから,事情によっては減軽しなくてもよいのである。何故か。たとえ未遂であっても「既遂に匹敵するような危険が惹起される場合も存在することなどを考慮」(山口厚『刑法総論』第2版,pp.266-267)したからだ。したがって,量刑判断の妥当性に帰着する問題だから,これを刑法177条(姦淫)の解釈論批判に用いるのは的外れだ。

それでも,刑の減軽がなされる可能性がある以上,そのような解釈を採るべきではない――百歩譲ってこの主張を認めるとしても,最大の問題は次の点にある。既遂を成立させる「姦淫」をどのように再定義するか? これは強姦罪と強制わいせつ罪(176条)を区別する重要な指標だが,明確で説得力のある基準を打ち立てることができるだろうか? 口淫も「姦淫」に含めるのか? 強姦罪は規定上,女性しか被害者とならないから,これによれば,女性に口淫させれば強姦(既遂)だが,男性に同じことをさせても強制わいせつ罪(既遂)しか成立しないことになる。この違いを合理的に説明できるのか? 女性の口のほうが,男性の口よりも,性的自己決定の点から見てより強く保護されるべきだから? まさか。

ここで長々としょうもない解釈論を述べたのは,ある種の「誤解」を解いておきたかったからだ(我慢してここまで読んで下さった方,ありがとうございました)。つまり,裁判官や学者というのは,屁理屈ばっかり並べて現実を見ていない,という誤解である。これはある意味では真実だろうが,だからといって,素人に法律解釈が出来るとか委ねるべきだということにはならない。上記の例を見ても分かるように,著者の見解は,現実に起こっている事件を解決するだけの切れ味を持っていない。要するに,「使えない」議論なのである。「使える」議論は,プロに任せなければ無理だ。これは,どの学問でも同じだ。

本書の一番の問題は,ド素人が法律解釈論に手を出した点だ。解釈論というのは,論理的思考力や創造性が要求される知的作業だが,すべてを明文化できない「暗黙知」にも従わざるをえないという点で,職人的な技術も要求される。この点で,建築や外科手術に近い営為といえるだろう。本書の著者は,専門用語も理解していないばかりか,判例と裁判例の違い,立法論と解釈論,実体法と手続法の区別すら理解しておらず,しかも日本語で書かれた条文すら読めていない。要はただのジャーナリストだ。たとえば,医療ジャーナリストが,「私も長年取材を続けてきたから,外科手術だってできる筈だ」と言い出したら,こいつ馬鹿じゃないかと思われるだろう。本書は,それと同じことをやっているのである。

一般の読者はきっと,法律解釈とは何か,などという疑問は抱かないのだろう。たしかに本書のウソをふつうの人が見抜くのは難しい。だが,たとえば『本を読む本』で紹介されているテクニックを使いこなせるくらいの読書家であれば,十分可能だろう。きちんと検討すれば分かるが,本書は,部分としてはなんとか理解できても,全体として整合性がまるでない。

刑事事件などの法律問題に興味があって,なおかつ知的誠実さを持ち合わせているという人には,本書ではなく,山口厚『刑法入門』,三井誠=酒巻匡『入門刑事手続法』第5版を,おすすめする。裁判所や裁判官の実態について興味がある,という人には,読みやすい新書として『司法官僚―裁判所の権力者たち』,『最高裁の暗闘 少数意見が時代を切り開く』をすすめたい。

※2011/8/27追記:文春文庫版113ページで,最高裁判決を《 》で引用している。後ろから6行め,「その犯罪行為としては《懲役一〇年が相当》としながら」の部分だ。ところが,判決の原文に当たってみたが,このような記述は存在しない。事件番号と裁判年月日は,最高裁判所昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決。裁判所のウェブサイトで見ることができる。引用文を改変どころか,捏造するのは,もはや文筆家としては終わっている。筆を折るべきだろう。
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