カスタマーレビュー

2013年4月17日
午前1時13分。
俺は白だしのためだけに、最寄りのY'sマートに来た。
夜は更けるとも、白い光が眩い不夜の巷。左の瞼がひくついて堪らない。
俺はカゴも持たずに店内をうろつくのだ。
トマト……わけぎ……こんにゃく……鮭の刺身………
だがそれらを買う事はない。手にするべきはただ――ヤマサ白だし1.8リットル。
では何故俺は歩くのか?無駄にスーパーを蹌踉うというのか?
そこは俺にとって郷愁の在り処だったからだ。
家族と連れ立って買い物に行く。あの時のありふれた追憶の残滓、
それが今と重なるかもしれなかった、“ありえたかもしれない人生”がどうしても恋しくなる時がある。
一人で生きていくと決めて、その選択に自分を投企した。
我ながら、それは最良の選択だったと思っている。
だがそれでも尚、選ばなかった人生が、幻を伴って痛む。そんな時がある。
その痛みと後悔を繰り返す、それが人生なのだろう。
分かっている、だが割り切れやしない。
いつまで経とうとも、後悔への“覚悟”がままならない。
そんな時俺はスーパーに行く。追憶に身を浸し、自分で自分を慰める。
そして迷宮のような陳列台の迷宮を歩くのだ。
だが気づくと、いつの間に目前には調味料コーナーがある。
そしてそこにヤマハの白だしがあった。
ふっと、心が軽くなった気がした。ヤマサの白だしは日本一だからだろうか?
彷徨は終わったのだ。
俺は白だしを手に取り、カウンターへ向かう。
午前1時55分。今回はまだマシな方だ。

底の深いフライパンにお湯をブチ込んで、強火にかける。忘れずにコンブも一枚入れた。
沸騰するまでに、俺はにんにくを切る。
冷凍庫から取り出したばかりのニンニク一つ、痛い冷たさが指の腹に突き刺さる。
それを耐えながら輪切りにして、そしてみじん切り。
欠片となったニンニクに、塩をふりかけてつまみ喰いだ。
深夜には背徳的に過ぎる、濃厚な味。むせ返るほどに稠密な美味に、俺は震えた。
次いでベーコンも切り、もう一つのフライパンに二つをブチ込む。
そこに、赤唐辛子、オリーブオイルはもこみちリスペクトの大量、最後にダメ押しで昆布茶の粉末を投入する。
そして又、全てをべっとりと纏わせたベーコンを摘まんで喰らう。
油脂が滑らかに舌をすべる。純朴な辛みと塩味が絡み合う後ろめたさ!
と、お湯が沸騰したようだ。パスタを袋から取り出す。
目算で二人前ほど、パスタは折って――折る時の、ブチブチと筋繊維が千切れるようなあの音が好きだ――投入する。火力は中火と弱火の間。
滞りなく、右手の菜箸でパスタをかき混ぜ、そして左手はもう片方に火を点火する。
具材を弱火にかけて、匂いが立つまで煮詰めていく。
その際、換気扇をONにすると、バコっという大げさな音が響いた。
ぢゅくぢゅくとオリーブオイルが弾け始める。軽やかな馨が俺の鼻に届く。
時々パスタの硬さを確認する。未だ芯が残る一本、チュルリと啜る。
ダシの効いたゆで汁とマッチしてまた旨い。
更に数分、もうパスタは良いだろうか。ザルに戻す前に、ゆで汁を少し、煮詰めたオリーブオイルらの中に投入する。喧しい騒音、乳化を壮絶に果たすそれが心地いいんだ。
そしてパスタをザルに入れて、お湯を切り、間髪入れずにフライパンへ。
迅激を以て混ぜ込み、そして白だしだ。
俺は白だしが好きだ。唐揚げの下味や、勿論うどんのつゆにも、白だしが欠かせない。
中でもパスタにはドボドボ入れる、それはもうドボドボ入れる。
円環を描きながらドボドボドボドボ…………
最後に黒胡椒、そして醤油をサッとかけて、和風ペペロンチーノの完成だ。

俺は乱雑に更にブチ込みをそれを喰らう。
お供には俺を陶酔の悪酔いへといざなう安焼酎。
箸を取り一気呵成に啜る。灼けつく辛みを纏い、ズンと来る濁流さながらのペペロン。
深夜に喰らうには罪悪感を伴う。だからこそ突き上げるにんにくの風味が堪らない。
ズルズルゥ、ジュリュリュリュリュリュゥゥゥ!
虚空に啜りの音色が響いては消えていく。
やはり麺ならば啜りたい。
フォークとスプーンを使う類のチマチマした喰らい方は、性に合わない。
箸で鷲掴み、そして啜る。
白だしとオリーブオイルでコーティングされた麺と、この唇が擦れあう。
そしてパスタの間隙を縫って、冷えた焼酎をジュルリと啜る。
凍てつきと焼けつきが交互に糾われる、素晴らしき俺だけの世界!
こんな深夜の戯れに、俺は一人で生きることの素晴らしさを感じるんだ。
パスタを喰らいつくした後、「ゲブブゥ……!」と勢い良くゲップを放った。
そして白だしの濃厚な残滓を感じて、また俺は幸せを感じた。
69人のお客様がこれが役に立ったと考えています
0コメント 違反を報告 常設リンク

商品の詳細

5つ星のうち3.5
5 customer ratings
¥1,135+ Amazonプライムなら、お急ぎ便が無料