フォーク/ロック、オルタナから始まり、ダンスその他を経てたどり着いた現在のくるりは、なんでも作曲できる希代な音楽の玉手箱。「(鉄道と)音楽博士」の岸田、極めて有能なベーシストでバンマスの佐藤のコンビは、バンド時代を経てくるりをSteely DanやTears For Fearsのように、曲に合わせて必要なメンバーを募る「ユニット」に変化させた。特にクラシック曲の作曲を手掛けるようになった岸田は、管楽器の使い方が極めて上手くなり、「大阪万博」や「less than love」のようなFrank Zappa的な曲を作れるようになった。Zappaが死去して20年近いが、彼の雑食的かつ現代音楽的な作曲スタイルに最も近いのは岸田ではないか。これを可能にしてきたのにはファンファンの存在が大きく、彼女の脱退はとても痛いが。今後のくるりには、WAKA/JAWAKAのような吹奏学曲で、なおかつ甲子園の応援に使えるようなシンプルにpopな曲を期待したい。
今作のインスト曲やインストに近い曲である「大阪万博」(ジャジーでファンクなインスト曲)、「watituti」(ブルージーな土の匂いのする曲)、「less than love」(トランペットの音が芳しく匂い立つインスト曲)の三連発を聴いてみてください。天才的で丁々発止な音楽的やり取りが楽器奏者の間で行われている。
「I Love You」と「ナイロン」は抑制の効いたミステリアスな楽曲だ。モーツァルトの音楽のように、聴いているだけで頭が良くなる(天才になる)と錯覚しそうになる、知性に富んだ楽曲だ。これこそ、天才の才能の発露。ああ、自分はこういう風な曲も気持ち良いのだなと、見知らぬドアを開けたような新鮮な気付きがある。