上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0終盤戦……?しかし?
2024年3月29日に日本でレビュー済み
今更ここにレビューを書いても読む人はいないでしょうが、気になった点を書きます。
ここから物語は終盤戦に入り、かぐや奪還編の序盤に差し掛かります。
問題はその入り方。かなりキャラクターの動かし方が変なのです。鬼才赤坂アカが何でこんなことに?ヤングジャンプ編集部は大丈夫か?と思わせます。
この巻の第209話でかぐやは渡米を諦めます。この話でかぐやのキャラとしての良さがぐっと減衰します。というのも先の136話(彼女が渡米を決めた回)では「実家を捨てるつもりで熟考しました」と言っているんですよね。
確かに浮かれていたかぐやではありますが、四宮の名前にかけて言ったことは守るというある種の漢らしい設定が彼女の魅力を担保していたので、この巻で熟考して決めた渡米を守らない人間になってしまいました。せっかく20巻かけて培ったキャラの強度にバキバキのヒビが入ってしまった。約束をあっさり取り下げ、泣きながら怪しい言い訳をするかぐやの図がここにあります。
渡米を取りやめたあげく「早坂愛には言わないで」という発言までしてしまい、かぐやと早坂の二人には強い絆もなにもないことを表してしまいました。この発言一つでそれまでのかぐや&早坂愛の友情描写が台無しになってしまっています。早坂の問題処理能力、実力はまったく信頼していないと明言しているようなものです。
なるほど確かに四宮の兄が怖いのでしょう。といっても、彼の怖さを裏付ける描写が少ないため具体的に何がどう怖いのか不明なのです。四宮家のお抱えの者がこの兄にたてついた結果不可解な死を遂げた、どれだけ逃げても戦っても無駄だ、その時警察は役に立たなかった、みたいな描写が丁寧にされていれば読んでいる方も「確かにそれは怖い」「渡米は諦めないと仕方ない」ともなろうものの(その場合でもかぐやは白銀に守らない約束をした嘘つきにはなりますが)、「ヤクザみたいな風貌だから、怖そうな顔だから怖いのだ」みたいな描写では明らかに弱い。兄を出してかぐやを抑えつけるのなら、もっと兄の野蛮さについての描写が必須です。一話まるまる兄の蛮行と暴君っぷりについて説明しても良かった。(白銀父の生業を潰したのが云々程度の暴露では四宮家の恐ろしさのアピールとしての引きは弱いです。)
兄の恐ろしさを克明に描かないのであれば、ここでかぐやには「脅すつもりですか?私は死ぬ気で戦いますし、早坂も私が守ります。私は白銀御幸に行くといいましたし、私に二言はありません。渡米します。」と言ってもらい、この兄との決戦を最終章とし、26巻前後で終わらせるのが美しかったと思います。
それだけあれば、かぐやとかぐや父の関係もしっかり掘れるし、白銀や生徒会メンバーも穏当な活躍をさせられただろうと思います。早坂愛はおそらく危険な目にあうでしょうが親友かぐやとの協力で切り抜ける姿は見せ場になったはずです。
何にせよ、四宮の名前にかけて誓ったことを守る四宮かぐや、早坂愛の唯一無二の親友であり聡明叡智の「かぐや様」のままで最終回を迎えるルートはここで消えたのです。この209話で決まってしまいました。22巻以降は全キャラが弱々しいキャラ立ちの「かぐや救出編」に入ります。
どうしてこうなってしまったのか。
一つはやはり136話でかぐやに「実家を捨てるつもりで熟考したんですよ」と言わせるべきではなかったのでしょう。渡米すると言わせるべきではありませんでした。渡米は前向きに検討する、くらいのトーンで抑えておくべきだったのです。確かに煮え切らない返答になってしまうので読者からの評判は悪くなっていたでしょうが、少なくともここの209話で雑に渡米を取りやめたとしても、約束はしていないから仕方ないな、とはなりましたから。
残念な209話でしたが、感謝を込めて評価は5です。
長い文章をここまで読んでいただきありがとうございました。