上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0これは遊びじゃない。本気で音楽やってるんだと思った。
2020年3月19日に日本でレビュー済み
6000字弱のレビューです。
[はじめに]
とりあえず、アルバム全体を二回通して聴いてみました。
ネタ曲、アイドル曲があるかと思えば、真面目な歌曲もあり、曲調にしてもポップス、ロック、ラップなど様々で、飽きることなく楽しく聴ける構成になっていたと思います。
おそらく曲順もライブのセトリのような流れを意識していて、自然な流れに身を任せることができました。
曲間が短く、余韻に浸る間があまりないこと、(これはフルアルバムでは一般的ですが)インスト版の収録がないことなどが惜しく思われますが、ここまでの完成度のものを出してくるとは思っておらず、驚かされました。
生まれ持った容姿に関係無く、声の良さや話が上手い人がこうやってvtuberとして活躍していて、世の中に良い作品を出している。私はライバーの方々にそれほど詳しいわけではありませんが、そんな今の文化が心から素晴らしいと思えて、感動してしまいます。
[CD情報]
Youtubeにて、公式からクロスフェード(各曲の良いとこどりをした短い視聴動画)が公開されています。
題名は「【3/18発売】にじさんじオリジナルフルアルバム「SMASH The PAINT!!」クロスフェードムービー」です。
購入前にぜひお聴きください。
CDはちょうど60分程度の構成になっています。
これは重要なポイントの一つだと思いますが、録音の質は良好でした。
ただ、基本的には、(アルバムのコンセプト上は自然ですが)インストよりもボーカルの主張が激し目です。
[リスニング環境]
フォーマット: AIFF(無圧縮CD音質)
プレイヤー: Raspberry Pi + MPDの音楽再生専用プレイヤー
出力: パッシブスピーカーと繋いだアンプへデジタル出力
[著者情報]
同人音楽からメジャー音楽まで、歌ありからインストまで幅広く聴いていますが、アイドル曲はほとんど聴いたことがありません。
ライブ参加経験は数十回。
CDを350枚以上所有。
[各曲の感想]
これ以降は、各曲の感想について述べていきます。
それぞれの曲について、曲名、ボーカル、作曲者、個人的な評価、感想を示します。
ボーカル、作曲者については敬称略とします。
ボーカルの名前に括弧抜きで-、★、★★、★★★の何れかを割り振っています。これは普段の配信の声(注意:歌枠の声ではありません)と歌声の一致度です。例外的に、ハイフン-は「評価無し」(私が当人をあまり知らないため)を表します。何れにしても、歌の上手さを表している訳ではありません。
曲の評価は★から★★★★★までの五段階としています。
曲の感想においては、正式名称ではありませんが、「n分音符」のことを単に「n分」と書きます。
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[01. 3倍! Sun Shine! カーニバル!]
Vocal: アンジュ・カトリーナ(★★)、戌亥とこ(-)、リゼ・ヘルエスタ(★★★)
Composer: 篠崎あやと
評価: ★★★
さんばかによるトリオです。曲名が示すような楽しげな音楽。
ライブだと間違いなく盛り上がると思いますが、かなりアイドル色が強めで、純粋に音楽としてみると平凡に感じます。
Cメロのとこちゃんが面白くて、少し笑ってしまいました。
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[02. Not For You]
Vocal: 叶(-)、葛葉(-)
Composer: ゆよゆっぺ
評価: ★★★
ChroNoiRによるデュエットです。サビはハモリも掛け合いも極めてかっこよく、一聴の価値ありです。
二人の声がかなり目立つトラック構成になっているため、ファンの方にはたまらないと思います。
やや葛葉さんに比べて叶さんの声量が無く、バランスに欠けているように感じますが、無理なバランス調整よりも声質の保持を選択したのかも知れません。もしそうだとしたら、ファンに優しい選択だと感じます。
個人的に男性ボーカル曲が苦手なため★★★としましたが、曲自体は良いため、人によっては★4または★5が付くと思われます。
サビのメロディがDIVELAさんの「ビートシンカー」(ボーカルは初音ミク)と似ています。
「Not For You」が好きな方は、きっと気にいると思います。
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[03. 1+1でQ.E.D.!!]
Vocal: 御伽原江良(-)、童田明治(-)
Composer: Nor
評価: ★★★★★
がぶりえらによるデュエットです。
ボーカルのお二人に関しては、切り抜きすら見たことがなく、全く存じ上げないので、声に関するコメントは控えておきます。
個人的には、このアルバムの中で、純粋に音楽として一番良いと思いました。
イントロとBメロは並だと思います。
Aメロは秀逸で、初めの四小節は朝のまどろみに飲まれながら目をこすっているような穏やかな感じを受けますが、残りの四小節はお天気の良い日に透明な風をあびているような爽やかな曲調にがらりと変わります。まるで、スキップをしながら大股で歩いているような気分でした。
サビ前(Bメロ終わり)はEDMにありがちな、上昇感を感じさせるような展開で、最後の小節では16分が主流となります。
サビに入ると一気に2分が主流になり、実際にはBPMは一定でありながらも、急に曲が遅くなったような錯覚を覚えますが、二小節過ぎるとまた4分が主流となるため、今度は速くなったように感じます。この見かけ上の速度変化が、もともと軽快な曲調をさらに軽やかにしており、心地よさを感じさせてくれます。また、水の泡を模したような音が一箇所に挿入されており、曲の明るさがより強調されています。
始終軽快な感じかと思いきや、二番Aメロの9-12小節には激し目のギターが挿入させており、アクセントして抜群の効果を上げています。
Cメロと間奏、特に間奏は、この曲の中で唯一の残念なポイントだと思います。せっかく曲が良いので、「はい!はい!」というような中途半端な掛け声を入れるのではなく、インスト単体で聴かせて欲しかったです。ちなみに、間奏で「ギター」と声が入りますが、ギターソロにはなっておらず、ドラムやシンセベースなども鳴っています。
アウトロも惜しいです。というより、アウトロがほとんどありません。あっさり終わってしまうのではなく、せっかくなら綺麗なエンディングを付けた欲しかった、というのは望みすぎでしょうか。
特に曲調が似ているという訳ではないのですが、7!!(セブンウップス)の「相愛性理論」という曲を思い出しました。
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[04. 青春モード! もう1回!!]
Vocal: 本間ひまわり(★★)
Composer: HoneyWorks
評価: ★★★
ひまちゃんのソロ曲です。
HoneyWorksらしい瑞々しい曲調で、ひまちゃんとよく合っていると思います。
ただ、あまり歌が上手いとは思えなかったので、★3としました。
サビは似たような八小節のメロディが二回繰り返されますが、二回目ではピアノ高音の4分が裏で鳴っており、みんなで楽しくジャンプをしているような気持ちにさせられます。
王道ポップスなので、他のvtuberや歌い手の方のカバーも聴いてみたいです。
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[05. サンデーサンデー・フルーツフール]
Vocal: える(-)、シスター・クレア(-)
Composer: 石濱 翔(MONACA)
評価: ★★★★★
聴く前からMONACAという時点で期待は膨らみました。やはり期待は裏切られず。
MONACAにありがちな、ちょっと予想外に方向に進んでいく展開がこの曲にも含まれていて、少し変な曲や歌いにくそうな曲が好きな人は、きっと気持ちよくなれます。
曲全体で起伏が小さいのですが、(典型的な展開にはなってしまうものの)間奏明けがもう少し盛り上がるバージョンも聴いてみたいと思いました。
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[06. Playtime Magic]
Vocal: 加賀美ハヤト(-)、夢追翔(-)、緑仙(-)
Composer: Avec Avec
評価: ★★★★
le jouetによるトリオです。
曲調も、男性2女性1というボーカル構成も、アルバムの中で異彩を放っています。
おしゃれな曲調に、緑仙さんのややボーイッシュな女声が相まって、少し大人な紳士淑女になれたような錯覚に陥ります。
Cメロはソロのラップです。緑仙さんの声は入っていません。男性お二人のうち、どちらが歌っているのかは分かりませんでした。
私の好きな曲調ではなかったため★4としましたが、仮にこのアルバムの曲別人気投票があったとして、この曲が一位になっても私は特に不思議には思いません。
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[07. Radical Rabid Riot]
Vocal: ジョー・力一(-)、鷹宮リオン(-)、竜胆尊(-)
Composer: 八王子P
評価: ★★★
RRRによるトリオです。
イントロはロックまたはヘビメタ感があり、夢アドの「アイドルレース」(作曲はヤバTのこやまくん)を思い出しました。この曲が好きな人は、「アイドルレース」も好きだと思います。私は両方好きです。
かなり王道で、音楽としての面白みがあまり無かったため、★3としました。
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[08. 圧 倒 的 存 在 感]
Vocal: 鈴原るる(-)、でびでび・でびる(★★★)
Composer: ARM (IOSYS)
評価: ★★★★★
でびるるによるデュエットです。
まるで映画。このアルバムで最も完成度の高い曲であること間違いありません。
まず、でびちゃんの声は配信そのままですし、鈴原るるさんのあざとくて可愛い声も効果的に活かされています。
曲はイントロ、Aメロ、Bメロ(?)、サビ、劇パート(?)、サビ、アウトロという異常な構成をしており、音楽と言うよりも演劇でした。
一番サビまでは並ですが、劇パートは感動もので、妥協の無いクオリティと纏まりを見せています。
しっかりとアウトロも付いており、落ちもばっちりです。
一部の曲調がチップチューンな点も、個人的な好みに合いました。
「こんるる〜」も聞けて、幸せになれますよ。
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[09. 煽動海獣ダイパンダ]
Vocal: 笹木咲(★)
Composer: やしきん
評価: ★★★
咲ちゃんのソロ曲です。
曲自体は文句のつけようがありません。
イントロの咲ちゃん感はこれ以上に無いんではないでしょうか。
ただ、声が配信のときと違いすぎて、咲ちゃんが歌っている意味があまり感じられませんでした。
歌が下手な訳ではないので、曲として一定の完成度は見せていますが、咲ちゃんファンとして満足できるかと言われれば、私は頷けません。
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[10. Only]
Vocal: 樋口楓(-)
Composer: YUC'e
評価: ★★★★★
樋口楓さんの歌は初めて聴きました。
経験者なのでしょうか。
圧倒的な歌の上手さに感動すら覚えました。
「ライバーにしては」、「素人にしては」ではなく。
ソロのシンガーとして通用すると思いました。
曲も良いんです。
遊び心を抑えて、音楽性を追求しています。
ピアノとアコギが夕方の少し物悲しげな感じも出していて。
盛り上がれる曲では決してありませんが、それでいて胸には強い印象を残します。
このアルバムの中から、vtuberを知らない人に一曲を薦めるとするならば、私はこの曲を選びます。
何となく、リトバスのサントラが聴きたくなりました。
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[11. Aimless Story]
Vocal: 静凛(-)
Composer: kz
評価: ★★★★
前曲に続き、音楽性を追求した真面目な歌曲です。
宇宙または星空のような神秘性を感じさせる曲調で、(ピアノの)ストリングスが心地良い。
特にエンディングが素晴らしく、エコーが掛かった静凛さんの声と低密度のピアノノーツで曲を綺麗に締めくくります。
最後の一連の音符は十秒以上サステインされていて、しっかりと、そしてしっとりと、余韻に浸ることができました。
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[12. アンチグラビティ・ガール]
Vocal: 月ノ美兎
Composer: TAKU INOUE
評価: ★★★
委員長のソロ曲です。
ライブでの登場シーンを彷彿とさせるイントロに、終始盛り上がる曲調、最後には徐々に強まりながら繰り返される「笑ってたい」と、アルバムまたはライブの最後の曲としてふさわしいと思いました。
ただ、最後の最後のエンディングはかなりあっさりしており、盛り上がりに欠けるまま曲が終わってしまいます。最終トラックなので、その後はただただ無音です。
この点が残念に感じました。
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[総評]
全体的に素晴らしかったと思います。
知らないライバーさんも多かったので、得るものもたくさんありました。
フルアルバムとして、相場よりもやや価格が高めですが、作曲者を考えると妥当に感じます。
長い時間を掛けて、本当に多くの人が関わって、良いものを作ろう、満足のできる仕上がりにしようと努力して。
このような妥協のない作品、大好きです。