上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0優しいけど生易しくはない。温かいけど温くはない。
2022年6月23日に日本でレビュー済み
2022年に入ってから自分の好きなバンドと初めてツーマンライブをやるということで、それならばと今まで聞いてこなかったtha blue herbを初めて聞いた。
ヒップホップは普段そこまで聴きこんでいるジャンルではなく、海外の有名どころをちょっとつまみ食い程度のどちらかと言えばロック畑の人間である自分。
しかしファーストに一発でやられてしまい、そこから順を追ってCDを買いあさり本作品まで辿り着いた。
初めて聴いたときには
「あれ?なんか言葉選びもちょっとこれダサくない?あれ?そんなカッコ悪い部分見せちゃうの嫌だよ。そんなところまで見たくないよBOSS。かっこいいところだけ見せてくれよ。演歌みたいってのもなんかわかるなぁ」
と、正直そんな風に思った。
でも自分が日常の中で自分自身に疑問を持ち、
「俺はまだやれるのか、もう前に進むには歳を取り過ぎたのか、もう遅いのか、手遅れなのか」
そんな風に人生に押しつぶされそうになっているときにこのアルバムを聴いたらBOSSの丁寧にライムする一つ一つの言葉が自分の心の中で響いて、今にも溢れそうなほど心の中で溜まっていた何かが浄化されたような感じがした。
このアルバムはファーストみたいにイケイケで切れ味鋭い日本刀のようなライムとトラックで並み居る猛者どもを切りにいくようなアルバムではないし、セカンドみたいにカトマンズの悲惨な路上を語ってはいない。
ファーストやセカンドなどでは聞き手の自分はどこか傍観者で居られたしその立場でただカッコよさだけを味わうことが出来た。
それは今の自分がその立ち位置に居ないからというのもあるかもしれない。
でもこのアルバムはBOSSの人生を通してこの日本に生きる俺たちの日常、現実をライムしている。
だからこそその現実を目の前に見せられるときに聴き手側に覚悟を迫ってくる。
目をそらしたくもなる。
「お前はどうすんの?」と。
そしてふっとそれをライムするBOSSの姿が目に浮かぶ。
並み居る猛者どもを切りまくってきた返り血で体中真っ赤に染まり、受けた傷も塞がり切らず、切り捨てた者、道半ばで去った者の夢、業、それらを双肩に背負い必死に耐えながら足を引きずりそれでもなお前に進もうとする。
そして俺たちの目を見据えて、
「ほんとよくやったよ、ご苦労さん。疲れたっしょ、まあ一杯どうだ」
なんて言うんだ。
BOSSやO.N.Oさん、DYEさん達に比べたら俺なんてまだまだっすよ、なんて思ってまた頑張ろうと思える、そんなアルバム。
ありがとうございます。