上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0サスペンスで、人間ドラマで、組織人ドラマでもある、四時間も納得の骨太な傑作
2019年1月20日に日本でレビュー済み
※前編/後編豪華版Blu-rayのレビューです。NHKドラマを未見での評価だが、なかなか歯応えのある力作だと思う。佐藤浩市をはじめとするオールスターを適材適所な配した穴の無いキャスティングと、警察機構の組織体質からの息苦しさ、警察とマスメディアとのプロ同士の緊張関係、事件が残す加害者・被害者そして警察官それぞれの人生への爪痕など、複数テーマを重曹的に扱った意欲的な脚本を見事に実現していた。
萩原健一主演、小柳ルミ子助演の1989年「誘拐報道」以来のこの誘拐&報道mix作品は、職業人の尊厳や組織の内包リスクをも扱い、現代日本社会の深淵を巧みに描いた秀作だと思う。
だからこそ佐藤浩市演じる県警警務部の三上広報官のスタンドプレイ色を強めにした狙いは良く判る。組織には、安全圏に居たり、誰かの協力を待っていては永遠に変えられないレガシーや得体の知れない力が存在することは厳然とした事実だ。それは決して集団クーデターを許さないからだ。一人の蛮勇だけがそれを可能にするが、決して三上一人では流れを変えられない。三浦友和の参事官捜査一課長、綾野剛等の広報課メンバー、瑛太等の県警付き報道クラブ面々、仲村トオルのキャリア警務課長、そして永瀬正敏の被害者遺族のそれぞれに対して、組織人から離れた三上と言う人間の剥き出しの行動が揺らぎを産み出していく。
何の為に働くのか、誰の為に生きるのか、切欠を作る三上を囲む様々な立場の人間達の苦悩と再生を余すところなく掘り下げたシナリオに震えた。
音楽や効果音はかなりドラマティックで、64年当時と現在を使い分けた画調、時代背景や生活感をリアルに切り取ったセットや小道具も含めた演出はかなり秀逸だ。個人も群像も演技は迫力に満ち、シリアスな台詞回しは近年にないハイレベルな出来。カメラも人物の寄りや多彩な画角でメリハリが効いていて全く飽きない。TVドラマでは予算的にどうしても届かない、映画だけが実現出来る格調と深みが感じられた。
本作は観る人の性別や年齢層で視点や受け取り方が異なってくる典型的な作品だが、特に熱演の佐藤浩市と同じ、家族のある中間管理職にはひときわズシンと響くだろう。
前後編を併せると少々お高めだが、プロの役者達がまさに人間を演じた名演は人生観を刺激するだけの力があり、更に組織人としての職業倫理を改めて足下から直視させる深淵で骨太な傑作だ。恐らく確実に何度か観ることになる事を考慮すれば、高い買い物ではないと思う。