上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0一貫する勇気、変貌する勇気
2018年3月3日
DECO*27 さん、現在でも初期の頃からの一貫したテーマを、音楽を通じて思考しています。このアルバムは、「 史上最もへヴィかつハード」と帯に書いてある通りで、様々な視点・設定を自身の生の生活感覚に落とし込んで、尖鋭にそのアポリアを追求しています。ですから他人の声ではなく自身の分身としてボーカロイド(ここではミク)の声のみを採用しているのでしょう。そしてその先鋭さや生々しさから、一瞥においては厨二病に近接してくるのも道理でしょう。そんな初期の頃のリリカルな曲からは大分遠い場所を歩いているDECO*27氏ですが、かねてよりのファンが、今でも氏を支持するのは、それが時局におもねった変節ではなく、真っ当にテーマを追求する姿勢から生じた変貌だとすんなり理解できるからでしょう。愛とエゴイズム/自己と他者といった2項対立が解消する世界=音楽、その体現へともがき歩む。このアルバムを聴くと見果てぬ夢を生きる芸術家の姿が浮かび、半世紀の人生を自嘲で誤魔化すこの凡愚の心を打ちつけるのです。