上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0前作はこのためのジャンプ台だったのかと思えるほどの出来映え
2015年8月29日に日本でレビュー済み
Spark Plugからちょうど1年、待望の新作です。
前作がいまひとつ抜けきらない出来だったことは他ならぬ本人達が一番痛感していたと思いますが(特にしりとりについては既にツアー中から剣さん自身がMCで反省してましたし)、そこを踏み台にして今回はかなり気合の入った作品をドロップしてくれました。
前作でのメロウネスを新たな武器にしつつ、また前々作の世界に少し戻ってきた感じがします。
前作では「メロディの詰めや楽曲のバラエティが足りないんじゃないか」とか「曲順おかしいんじゃないか」といった不満点がありましたが、これで一気に解消です。
初夏のライヴハウスツアーではMCで試聴としてアルバムのさわりを少し流してくれたのですが、それを聴いただけでも十分期待させられる音でした。実際に発売されたものを手にとって聴いてみて、「あれれ、やっぱ地味かなぁ」と最初は思ったのですが、Spark Plugに比べるとこちらの方がなんとなく繰り返し聴きたくなる感覚というか手ごたえがあり(しりとりがなかったのでいちいちスキップせずにCDをリピートで流しっぱなしにできるのも大きいと思いますが、単純にスルメ感のする曲が多かったので)、聴いていくうちに曲順、楽曲の出来ともに前作をかなり上回るバラエティと濃さであることが分かってきました。
歌詞にも少しユーモア感覚が(以前ほどもろな形ではありませんがそこは大人な感じで)戻ってきた気がします。
いきなりベースがブーンと入ってくる無骨な始まり方からしてクールな1曲目「Soul Paint」はいきなり濃厚なファンク、皮肉の効いた歌詞もいいです。
そこから続く2曲目「開拓者」は前作の「ドライヴ!ドライヴ!ドライヴ!」に似た入り方の曲ですが、こちらはマンダム感満載のホーンと土臭い歌詞も相俟ってスケール大きいです。
アップテンポなファンクチューンの3曲目「間違いだらけのクルマ選び」、パーカッションも効いてます。
前述の試聴時に一番気になった4曲目の「ニンゲンモドキ」は80年代ミネアポリスファンクテイスト復活で(プリンスというよりザ・タイム!)超ツボです。
裏拍のギターが気持ち良い、でも一筋縄ではいかない渋いメロディがなかなか譜面に落としづらそうな5曲目のタイトル曲はCDだけ聴いてる時には分からなかったんですが、ライヴで演奏されたのを聴いてけっこうネオソウルテイストを感じました。コーラスの重ね方とか少し前のディアンジェロっぽいかな、とか。 夏休みの終わりを描く枯れた感じの歌詞もなんともいえない感じで良いです。
先行シングルの6曲目「指輪」も前作にはなかったいかにもシングルにふさわしいキャッチーなナンバーです。女言葉の歌詞がグーですね(近田春夫さんに文春の連載で「そこだけが残念」と書かれて凹んだようですが)。
続く7曲目「パパの子守歌」は歌詞といいメロディといい前作のリードシングル「スパークだ!」の発展形と言えましょう。「スパークだ!」ではなんとなく曲と歌詞の詰めがゆるめだなと思っていたのですが(「みんなのうた」仕様にあえてそうしたのかもしれませんが)、こちらはイントロもメロディもアレンジももっと練られ、しかも転調まで入ってます。さらにこれがアルバムのラストじゃなくて真ん中あたりにあるのもポイント高いです。
そして復活のアイキャッチをはさんで夏の4ヶ月間を歌うラテンテイストの9曲目「6789」。これも試聴の時に気になってた曲でした。
10曲目の「ENGINE」は2曲目とやや似てる気がしつつも(キーも同じだし)、歌詞の世界が全然違うため違和感はないです。まあ今はこういう曲調が剣さんのモードなのでしょう。
さてそこから久々のスウェディッシュポップ風の11曲目「カフェレーサー」。CKBのアップテンポな8ビートの曲にはトーレヨハンソン風味を感じてしまうのは私だけでしょうか。「流星ドライヴ」とか「1107」とか「7月14日」とか。
曲名が些か凡庸?な12曲目「MONEY HONEY」はスイングするファンキーなナンバー。「マニー、ハニー、鰐ー、何ー?」 いや、いいライムです(笑
ちょっと中華風味な13曲目「シンガポール・スリング」、Bメロからサビまでの流れが上手いです。
いいかげんタイトル3回連呼するのやめなさいよと言いたくなる14曲目「レース!レース!レース!」、たしかに車の音のSEは入ってますがなぜか私が曲からイメージされるのはドッグレースでした。なんでかな。
曲名とロックな曲調がいまいち結びつきにくい15曲目「タツノオトシゴ」は剣さんのシャウトとジャッカルのサックスが聴きどころです。
もう一度アイキャッチ(こっちはなぜかお経風)、からの17曲目「Japanese Night」、なのに3連のソウルバラード(笑
対して18曲目の「La Americana」は最初のアイキャッチの「すっかり八兵衛」で出てきたフレーズをイントロに、これまでの「命をかけて作った曲」シリーズ風のド昭和なメロディから始まるという、どこがアメリカーナやねんという曲なのですが、サビではアーシーな感じに着陸していきます。
前作になくて寂しかったのはこの感じだったかもしれません。
そして最後はメロウで熱くて泣けるギターインストの19曲目「GTR」。のっさんの曲は前作ではアルバム中盤に2曲連続で並べられてて勿体無かったのですが、今回はアルバムの掉尾を飾ります。終わり行く夏をのっさんのギターが優しく見送っているようです。
CDは発売日に届いてずっと聴いていたのですが、8/29の福生でのツアー初日を見てやはりこのアルバムは名作であると確認できたので、ようやくレビューを書かせていただいた次第です。
長文で読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。
あとこのアルバムは是非今やってるツアーで聴いて欲しいですね。
新旧取り混ぜたシブめのセットリストの中で、このアルバムの曲群が光ります。