上位の肯定的レビュー
5つ星のうち4.0東郷平八郎の胆力と戦艦三笠の勇姿を記録した名作
2019年5月12日に日本でレビュー済み
1969年の東宝作で、円谷英二が特殊監督を務めた最後の作品。106隻ものミニチュア艦艇が用意され、中でも旗艦三笠は何と13mだ。CGを見馴れた今となっては確かに模型特撮なのだが、一旦海戦が始まれば中々どうして迫力モノだ。三大海戦と言われるだけに近代での艦隊同志の一大海戦を作戦俯瞰図と共に再現しているのが本作の核だ。
まさに乾坤一擲。ロシアに海上封鎖されれば日本全体が兵糧攻めで隷属に陥る瀬戸際だった海戦だ。
ストーリーは史実に基づいて東郷平八郎(三船敏郎)と海軍を中心に構成されている。何と当時は「コント55号のコメデイ映画」と二本立て扱いの二時間しかないので、兵士側の扱いは戦闘シーン等の一部に限られている。
その代わり宮古島の漁師達によるバルチック艦隊策敵での協力や、海岸に打ち上げられたロシア海兵の遺体収容等、民間での関わりも描かれている。
ストーリーの主なイベントは、広瀬少佐(加山雄三)による旅順港封鎖作戦、黄海海戦、乃木大将(笠智衆)による二百三高地攻略戦、明石大佐(仲代達矢)による対ロシア諜報と革命分子への後方攪乱活動の働き掛け、そして東郷司令による日本海海戦の五つ。限られた時間に詰め込んだ感は否めないが、下瀬火薬や精密砲撃の猛訓練等の解説も充実していて、戦勝要因を説明するのに大事な要素は押さえてあるので、判りやすいだろう。
加えてバルチック艦隊のロジェスト・ヴェンスキー司令長官への救命治療や病室での会見や、旅順での乃木大将との会談なども丁寧にフォローしてあり、東郷平八郎の人間性を深く掘り下げているのがハイライトだ。三船敏郎は黒澤時代劇とは打って変わって寡黙でどっしりした風格抜群の演技で、真一文字に結んだ口元とまだ見ぬロシア艦隊との興国を賭けた海戦を凝視する眼光には素直に引き込まれた。脚本は今一つ詰めが甘いが、東宝所属役者の厚みと円谷監督の特撮だけでも十分傑作だと思う。
映像特典の特撮風景や戦艦三笠の紹介も含めて日本海海戦を最も簡潔に学べ、帝国海軍の海将の覚悟を知る事のできる名作です。
但し、この大勝利が帝国海軍を大艦砲艦主義による百発百中神話に傾斜させ、大東亜戦争における航空戦力主体の機動部隊運用で米国に出遅れる下敷きになろうとは、当時は知る由もないのが今となっては虚しい。