上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0大輔の男気がまぶしい
2014年2月2日に日本でレビュー済み
前作で大輔は栞子に告白しその返事を待つ過程が本作の基盤です。全体を通して二人の距離が3つのエピソードを通じて徐々に近づいていきます。構成はプロローグと三つのエピソードそしてエピローグで、一つのエピソードが終わると断章が置かれます。エピローグでは次作へのひきとなるエピソードがあります。
さて、各話の語り手が主人公の五浦大輔なのはこれまでどおりですが、附属する断章の語り手はそれぞれ違います。それぞれの語り手の人生の背景が語られますが、しかもすべて母親の智恵子が絡んでいる。栞子は大輔に返事するためには決着をつけなくてはならない。でもそれが何かは分かり切っていることなのですが、最期に栞子自身が語ることでけりがつく。そのためにこういう構成にしたようです。
断章の語り手はおおよそ次の通りです。
第一話の断章1の語りは志田。
第二話の断章は栞子の友人、滝野リュウ。
第三話の断章は栞子自身です。
それぞれの人生の人には語りたくない部分が描かれます。そして同時に栞子が大輔以外のから見た姿が語られます。もちろん、語り手たちはその姿を母、智恵子とダブらせている。それは栞子自身ですらそうなのだ。
そしてエピローグはなかなか感動的かつ、次作を大いに期待させるものです。でも案外、これは、あれかも…
栞子は母とそっくりな自らに不安を感じ続けている。それが大輔の思いにこたえることをはばからせている。
父と母の出会いと残された父は幸せだったのか。父に大輔を重ねてしまうと、大輔を不幸にしかねないのではないかと悩む。それは栞子が内面も外面も母、智恵子に生き写しなのことがすべての原因。自分を母と重ねてしまわざるを得ず、そしてそのことに魅力を感じている。それが回答を延ばし続けてきた原因だった
物語は4月に始まり5月に至る。栞子が大輔と取り決めた期限だが、それは同時に栞子が智恵子との決着をつける期限でもある。五月は母子にとって等しく選択の時だ
母、智恵子は自分の能力を信頼している。そして娘を相方に迎え入れたいと願っている。娘、栞子はそんな母に似た自分自身をおそれる。それを乗り越えてハッピーエンドとはいくかは読んで確かめましょう
ただ、一つ言えるのは大輔は男気がある、ということです。
前作よりもテンポがよく、無駄な登場人物もなく、完成度が高まっています。安心して読める一冊です。