しかし実際にこのアルバムを聴いてみると、胸焼けに似た感覚を覚えるとともに、少し物足りなさを感じてしまいます。私は畠山美由紀のこれまでの作品を非常に高く評価しています。独自の視線から誰の真似でもない自身の言葉で喜びや悲しみ、故郷への想いなどをこめる作品作りは、彼女独特のものであり、とても他人にできるものではありません。ところが今回の震災一辺倒ともいうべき作品の作り方に、彼女の独自性を見出すことはできず、言い方を変えれば、この大震災である一定以上の影響を受けた人間ならば、彼女ではなくても似たような作品を作れるのではないか、と感じてしまいました。 また、このアルバムの中で彼女はWhat A Wonderful World, Moon River, Over The Rainbowなどをカバーしているのですが、多くの人に歌われ文字通り手垢のついた名曲にも拘らず、どれも彼女の魅力を十分に引き出しているとは言いにくい仕上がりです。これまで彼女が歌うWOMAN, Every Breath You take, Time After Time, So Far Away, Jesse, 星影の小径などを聴いて身の震えるような感動を何度も味わってきた私としては、今回そのような感情に身を委ねることができなかったことを、非常に残念に思います。