上位の肯定的レビュー
5つ星のうち4.0耳から楽しむ「涼」。互いの良さを引き立てた好企画
2011年7月16日に日本でレビュー済み
2人組ボサノヴァ・ユニットnaomi & goroとジャズ・サックス奏者の菊地成孔。両者の出会いはFMラジオ局J-WAVEが開
催するライヴイベント「TOKYO M.A.P.S」。naomi & goroのメンバー伊藤ゴロー氏が菊池氏を呼び込む形で共演を果た
し、それをきっかけに本盤制作の企画が生まれたという(ブックレット内インタビューより)。
元々naomi & goroの音楽はギターと歌という簡素な演奏構成が軸だが、本作では菊池氏がサックスに加え、ピアノ・チェ
ンバロ等の鍵盤楽器でも参加。彼らの爽やかさ・涼やかさといった味はそのまま残し、サックスというもう一人の「声」が
加わることで、新たな音の感触と良い意味での緊張感がもたらされた好内容となっている。
正直初聴時に若干違和感を覚えたが、それはこれまでのnaomi & goroの作品群とは異なる空気を感じた為だと思う。
サックスという楽器は音色自体に強い存在感がある為、音のバランスを考慮しないと他の楽器・ボーカルの繊細なニュア
ンスを壊す危険を孕む。しかしそこは菊池氏自ら語る様に、楽器のセッティングに留意し音を意図的に小さくしたり、布施
直美のボーカルとサックス・パートを交互に入れたりと、ミニマムな構成の中でせめぎ合う音同士の共鳴を大切にしなが
ら、新たな色を加える様な試みが見受けられる。
作品は2曲の日本語オリジナル(M9.M11)を除き両者から選ばれたカヴァー曲中心に編まれ、有名処ではアントニオ・カ
ルロス・ジョビンの「イパネマの娘」等を聴ける。
特に好きなのがブリジット・フォンテーヌの「Brigitte」。布施氏の声で放たれる柔らかい仏語の響き、背後で鳴るピアノの
ひんやりした音、静かに舞うサックス、淡々と繰り返されるギターのループ…全てが極上の心地良さだ。
カヴァー中心の本作で再認識したのが布施氏のボーカルの素晴らしさ。どの言語で歌われる言葉の発音ひとつも蔑ろに
することなく、静かな歌い方の中に込められた感情の起伏は、聴く者の心を歌の物語へ引き込む強さがある。
軽やかでべとつかない布施氏のボーカルとクールなサックスの響きは、耳を通すだけで体に涼しい風が舞い込む様。これ
からの暑い季節に嵌ること請け合いの好作だ。