上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0尖ったものが、だんだんと丸くなっていく
2015年10月11日に日本でレビュー済み
坂本龍一と大貫妙子を聞き始めたのは1983年である。大学一年生の時だ。もう、30年以上前である。
30年という時間は歴史から見ると大した長さではない。但し、一人の人間としては、決して短くもない。
その間に、卒業し、社会に出た。伴侶に出会い、結婚し、子供が産まれた。家族でタイとインドネシアに住む機会を得たことで
日本も10年近く離れた。
そんな中で、いつも、というより、時折、お二人の音楽を聴いてきた。
年齢により、状況により、環境により、僕の聴き方は変わってきているはずだ。時間は僕の耳を変えていく。そこにある
音楽は変わらなくても。
勿論、それは、お二人にも返せる。彼らにも、彼らなりの30年間があったであろうから。
本作はシンプルだ。坂本のピアノと大貫のボーカルだ。かつての坂本編曲の大貫のアルバムはどちらかというと
才気走ったものだった。それを覚えている僕の耳は、そんなシンプルさこそを「30年という年月」と聴く。
尖ったものが、だんだんと丸くなっていく。そんな様は、なんだか貴いものに思えてしまう。
これからの年月がどこまで彼らに、そして僕に、残っているのかは分からない。その間も時折聴いていく
のだろうという予感はある。言うまでもなく楽しい予感だ。年を取るということは決して悪いものでもない。