上位の批判的レビュー
5つ星のうち2.0残念な作品
2010年9月19日に日本でレビュー済み
TV版と劇場版の両方を鑑賞したのだが、これは完全な失敗作といえるだろう。
『Ghost in the Shell: Stand Alone Complex』(SAC)という傑作でその存在を世界中に知らしめた神山 健治監督であるが、今回は、その理知的な作風がことごとく裏目に出ている。
SACという作品が大人の鑑賞に堪える作品であったのは、虚構の近未来社会を描きながらも、作品が、現代社会を隠然と蝕む「悪」とむきあい、それと格闘する大人を主人公としていたことにあると思う。
SACの主人公たちは、個人の青臭い正義感などというものが、実際にはひどく傍迷惑なものであり、また、この現実世界を変えていくためには、全く無力なものにすぎないことをわきまえていた。
正にそれゆえに、物語は、適度な諦念を湛えた地に脚のついたものとなりえたのだと思う。
それと比較すると、『東のエデン』という作品は、あらゆる意味において、あまりにも精神年齢が低く、鑑賞するのが苦痛でさえある。
確かに、作品には、神山監督の持味である同時代に対する真摯な問題意識が息づいているのだが、しかし、今回は、それが、少しばかり知恵のついた高校生の作文のように、あまりにもひとりよがりに表現されている。
とりわけ、現代日本の問題の根源にあるものを世代間の経済的な格差と断定して、既存の「システム」に参画することを拒絶することが状況の打開をもたらすとでも言いたげな作品の発想は、あまりにも思慮の欠けた凡庸なものといえるだろう。
また、表面的には真摯なようでありながら、その本質においては、社会そのものを見下したような傲慢さと夢想のなかに耽溺しているような軽薄さを漂わせる主人公たちも魅力がなく、全く感情移入をすることができない。
これでは、Production I.G.の卓越した技術力をむざむざと無駄にすることだろう。
それにしても、残念な作品だと思う。
設定そのものが非常に奇抜であり、また、無限の可能性を秘めたものであったと思う。
しかし、物語が進展するなかで、それは、こどもの物語として確実に矮小化していった。
個人的には、神山監督には、あらためて、純粋な娯楽作品をつくるという原点に回帰していただきたいと思う。