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5つ星のうち5.0財政難改善を阻む僧侶・貴族の特権階級の横槍。最終的には血で血を洗う抗争に至る。
投稿者孔明2015年11月6日
世界史上でも名高い「フランス革命」の経緯を詳細に解説する。
フランス革命は「ベルサイユのばら」の影響か、王妃「マリー・アントワネット」の浪費が原因であるように言われているが、いくら彼女が散財や浪費をしたとしても国家財政を傾けるような程度には遥かに遠く、真の原因は太陽王・ルイ十四世の治世から続く対外戦争での慢性的な赤字による国家財政の破綻である。
絶対王政の全盛だったルイ十四世が崩御し、後を継いだルイ十五世は美男子あったが政治は疎く、対外戦争を繰り返しては負け続けた。
しかも全人口の4%しかいない王族・貴族・僧侶が富を独占し、多くの民衆が重税に苦しんでいた。
当時の民衆の取り分は総収入の10%と言われ、貧困で平均寿命は25歳しかなかった。
戦争に負け続け、女性にかまけ続けたルイ十五世が死去すると19歳のルイ十六世にフランス財政の再建が託される。
だが、このルイ十六世が「優柔不断で決断能力のない男」。臣下の言うままに事を進めて状況に対して無関心。
再建を託された大蔵大臣はいずれも「貴族・僧侶などの特権階級への課税」を進言するのだが、当然に特権階級は自分たちだけが甘い汁を吸いたいがために、大反対。その度ごとに大蔵大臣の首がすげ替えられるが、結局のところ結論は「特権階級への課税」しかなく、遂には数百年開催されなかった「僧侶」「貴族」「平民」の各身分から代表者を選出する三部会を開催されることになる。
しかし、三部会は「貴族・僧侶」の特権階級層と「平民」の対立を明確にし、やがて数の力で議会政治を実現しようとする平民たちを王を抱き込んだ貴族たちが武力で押さえ込もうとして紛糾。「人権宣言」が出されたものの特権階級の数々の権利は保証されるなどして実態は骨抜きだった。
やがて民衆は暴徒と化して各地を襲う。「革命」が始まったことは欧州各国の王家を動揺させた。
ルイ十六世は病的なまでの日和見主義で、革命を潰そうと躍起になったのは王妃のアントワネットのほうであった。
だが、身の危険を感じて逃亡しようとするも失敗。欧州各国と革命軍との間で戦争が始まると王妃は実家であるオーストリアに機密情報を渡して、
革命軍を潰そうと画策する。そういった売国奴のような行為が結局のところ自身に跳ね返ってくるであろうことを彼女は予想することが出来なかった。
王政は廃止され、国王一家は処刑される。けれど財政は火の車であり、対外的には諸外国と戦争。内政的にはまとまらず内憂外患の中で、
堰を切ったように反革命勢力と見なされた人間は逮捕・投獄され、ギロチン台へ送られていく。
ロベスピエールの恐怖政治でそれは頂点に達した。
かくも多くの死者を出したのは、革命の担い手となった人間がいずれも政治家として素人の人間ばかりであったからだ。
これまで支配されていた全人口の96%の平民出では、他よりも優秀であったとしても経験は皆無であった。
軍も実績のある優秀な人間は亡命したり、革命初期の戦いで戦死したりしていて、対外戦争では革命軍は負け続けた。
民衆は明日のことより今日のパンのことしか考えない。これは古今東西を問わないが。
流血が流血を呼ぶという悲惨な毎日が続き、それがロベスピエールの処刑を以てようやく下火になったのは、
あまりにも多くの人間が殺され続けたため、もう殺す人間もいなくなったような状況であったがため。
かくて多大な犠牲の上に革命は第一段階を越えて、時代は英雄・ナポレオンの登場を待つことになるのだ。