上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0周囲の人たちと具体策を話し合うことが大切
2018年11月12日に日本でレビュー済み
まずは、本書が出版されたこと自体に大きな意義があると言えるでしょう。特に大正世代が現役から引退し始めた1970年代に入った頃から、自分の身は自分で守る、という当たり前のことが具体的にどのようなことなのかが分からなくなり始めました。今や、平素から不測の事態に備えて警戒し防御を怠らないよう心がけるべきこと自体を、不安を煽るなどと言って牽制する動きが目立ちます。
本書はスイスが国民に配っている「民間防衛」(以下「元祖民間防衛本」)をベースにして日本の国情に合わせて作成されたものです。まず、元祖民間防衛本(翻訳本)よりも一回り大きく、高齢者でも読みやすい様に活字も大きめになっている点を評価したいと思います。我が国を取り巻く状況と対策については、まだ説明が整理しきれていない部分があって、手引書としての文章の書き方としては直した方がよいところがありますが、それにもまして、まず本書を出して国民の啓蒙を始めることの方が重要でしょう。
元祖民間防衛本と読み比べてみましたが、ひとつ重要な違いがあることに気がつきました。この違いとは構成とか書かれている内容についての違いではありません。読者の背景が根本的に違うという点です。元祖民間防衛本にも武器に関する記述はありませんが、国民皆兵で銃器の保有率が極めて高い同国では、国民全体が武器の取り扱いについての訓練を受けていますので、元祖民間防衛本はその知識と経験があることを前提に書かれていると考えてよいでしょう。武器の安全管理や取り扱いだけでなく、どのように使用されるのか、負傷した時の対処など、スイスの国民は熟知しています。つまり、もうひとつのマニュアルが頭の中にあっての元祖民間防衛本であることは今の日本人にはなかなか分からないかもしれません。もちろん、本書の筆者の方々はこのことを分かっておられるでしょう。
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平成31年1月4日追記
元祖「民間防衛」は、民間防衛組織の運用手引き、つまり実際に運営されている民間防衛組織の一員としての国民への説明が中心であるのに対して、本書は、まず具体的危機として何が存在するかの解説が中心です。元祖の方では特定の国や組織を明記していませんが、本書ではすでに発生している危機について具体的に取り上げています。この点は、国情と時代の違いを反映していると思いました。