上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0ルーズベルト政権の中には、数百人のソ連スパイがいた!
2019年9月30日に日本でレビュー済み
『ヴェノナ文書』とは、アメリカによるソ連暗号の解読文です。これは、第2次大戦中に、ソ連がドイツと単独講和をすることを恐れたアメリカが、遅ればせながら、ソ連暗号の解読を開始し、戦後になってようやく解読に成功したものです。
暗号解読で判明したのは、当初の目的だったソ連の単独講和の兆候ではなく、アメリカの政権中に居る、多数のソ連スパイのことでした。しかし、インテリジェンスの常で、ソ連暗号を解読したことは、長らく秘密にされてきました。そして、1995年になってやっと秘密解除されることになりました。
これまで、「マッカーシズムにより多くの無実の人が赤狩りの被害にあった」とされてきました。しかし、『ヴェノナ文書』が秘密解除されて明らかになったことは、驚くべきことに、1930年代から1940年代にかけて、アメリカ政府の中に数百人ものソ連スパイがいたという事実でした。そして、当時スパイと疑われて、無実の罪に苦しんだとされた人々の多くが実際には本当にスパイであったことです。ソ連の暗号を解読したことを秘密にしたために、証拠不十分で無罪となっていたのでした。
この中で、日本に関係があるのはハリー・デクスター・ホワイト財務次官補です。ホワイトはハル・ノートの最初の起草者であったことが知られています。彼は、ソ連の意向に沿って、日米を戦わせるべく、ハルノートの原案を書いたわけです。彼がソ連のスパイであったことも『ヴェノナ文書』の公表で明らかとなりました。
『ヴェノナ文書』の公表はインテリジェンスを知ることの重要性を改めて認識させるものでした。そして、その公表によって、歴史の記述が大きく書き換えられることとなりました。今や、インテリジェンスの知見抜きには歴史の理解が不可能であることがよく解ると思います。
『ヴェノナ文書』は、日本ではあまり詳しく報道されることがないため、今でも十分には認識されていないようです。しかし、アメリカでは大変な話題となり、いくつもの本が出版されています。この本、『ヴェノナ』は、その中の一つで、ソ連側の公開文書とも突き合わされた、優れた本です。
訳書は2010/1/30に3200円でPHP研究所から出版されました。しかし、高くてあまり売れなかったのか、その後、長らく絶版のままとなっていました。古本価格は「23749円より」と高騰していました。これ程重要な本が長らく絶版のままだったのは、異常な事態でした。この度、やっと、扶桑社からソフトカバー版で出版の運びとなりました。
今回は、巻頭に江崎道郎氏の「いま、なぜ『ヴェノナ』なのか」が、2.5頁加えられていて、この本があらためて出版される意義を述べています。
出版を心から歓迎したいと思います。歴史および現在の理解に欠かせない、重要な一冊です。