上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0現代の「源氏物語」
2018年11月26日に日本でレビュー済み
日本の、超排他的で人口の0.001%しかいない「東京で三代以上続く家柄のよいお金持ち」の庶民が知らないリアルな生活っぷりが覗けてとても面白い一冊です。
日本のブルーブラッドの生態をドラマや小説や映画で表現しようとの試みは、今まで数多くなされてきましたが、ただの1つも成功していないことを考えると、これは凄いことです。
ある程度インサイダーであり、なおかつアウトサイダーの著者でなければ表現し得ないないあれこれが、独特の突き放した視点で赤裸々に描かれております。モデルにされた人はたまったものではないでしょうが、あくまで小説ですから、登場人物はすべて、著書の取材対象者の多数の人物のエピソードと想像とを、巧みに総合したものと思われます。
それにしても主人公の久坂さんと田口さんはじめ、2人が関係する様々な女たち。駐在妻からCA、芸者さん、社長秘書、謎の中国人マダム、に至るまで、現実にいる人のようで著書の創るキャラクターにいちいち血が通っていることには唸らせられます。
主人公は2人いますが、現代の「源氏物語」とも言える雅やかな本作。
自分のすでに持っている金と権力に飽き足らず、とどまるところを知らない貪欲さでさらなるパワーを追い求めるという生き方を礼賛するかのような現代社会。その病に染まりきってしまわないためにも、金や権力には見向きもせず、ひたすら色恋に耽溺した光源氏に想いを馳せつつ読むのが本作への正しいアプローチです。
そして男性だけでなく、ハイスペック男子をゲットしたいけど、何故かいつも撃沈してしまう、という女子にも是非読んでいただきたい一冊でもあります。男が女に1番隠しておきたい本音が、かなりズバズバ出てきますよ。