「入門」とタイトルにありますが、原書にIntermediateとあるように学部2年向けのテキストです。非常にわかりやすい記述です。残念ながら旧版の翻訳と同じく、練習問題の解答と数学付録をカットしています。新たなトピックを導入してはいますが、学部の授業で価格理論とゲーム理論の初歩を学習する目的なら旧版で十分です。 ページ数は696と大部ながらソフトカバーになり、価格と厚みを抑えたようです。しかし、ページ数540以内、価格4000円以下で日本人著者による優れたミクロ経済学のテキスト(例えば神取『
ミクロ経済学の力
』、奥野『
ミクロ経済学
』、奥野ほか『
ミクロ経済学演習
』など)が多く出版されたなかで、内容を削った邦訳を出す意義は低下してきたと思います。翻訳教科書では東洋経済新報社が多くを手がけており、1冊700ページ超、上・下2分冊などで高価格にはなっているものの、内容をあまりカットせず編集した本が多いです。分厚くなってでも1冊にまとめた本では有斐閣の『
マクロ経済学 新版 (New Liberal Arts Selection)
』が800ページ超で、学部と大学院レベルで隔たりのあるマクロ経済学を初級から上級レベルまで網羅しています。勁草書房には編集方針を再考していただきたいです。