上位の肯定的レビュー
5つ星のうち4.0人間としての等伯
2017年8月16日に日本でレビュー済み
七尾から単身上洛し、当時画壇の主流だった狩野派に挑み、高い評価を獲得していく長谷川等伯。この小説では、そんな歴史上の偉人のようでもある等伯の人間らしい弱さ、葛藤、内面が描かれ、思わず感情移入するような内容になっています。これまで、偉大な絵師として等伯を仰ぎ見てきた人には、人間臭い等伯が新鮮に映るのではないでしょうか。等伯を扇屋の主人にするところなどは創作かと思いますが、生家との関係、狩野派との対立、久蔵の死、松林屏風図の誕生、江戸に向かう途中での最期など、断片的に伝わるエピソードが上手に一つのストーリーとしてまとまっており、等伯の資料としても、娯楽の読み物としても、楽しめる内容になっていると思います。