上位の批判的レビュー
5つ星のうち2.0始まりと終わりはよいです
2007年2月25日に日本でレビュー済み
書き出しが素晴らしい。
<陽が傾き、潮が満ちはじめると、志摩半島の英虞湾に華麗な黄昏が訪れる。
湾内の大小の島々が満潮に洗われ、遠く紀伊半島の稜線まで望まれる西空に、雲の厚さによって、オレンジ色の濃淡が描き出され、やがて真紅の夕日が、僅か数分の間に落ちていく。その一瞬、空一面が燃えたち、英虞湾の空と海が溶け合うように炎の色に輝く。その中で海面に浮かんだ真珠筏がピアノ線のように銀色に燦き、湾内に波だちが拡がる。>
「華麗な」ドラマの始まりを告げるにふさわしい、雄渾で美しい描写であるとともに、「僅か数分の間に落ちていく」夕日は、不吉な展開の予兆とも取れる。
結部もよい。レビューでは書けないけど。
ちょっと意外なんだけども、よく考えてみると、この物語はこのかたちでしか終わることができない、と思う。しっくりきている。
しかし、長すぎる。1800ページあるが、半分でも長いのではないか。あんまりストーリーも複雑じゃないのに進むの遅いし、繰り返しの状況説明が多すぎる。50ページごとくらいに同じ描写を読まされている。『ドラゴンボール』ってアニメがあって、あれはおもしろい話だと思うけど、毎回3ミリずつくらいしか話が進まなくて、ナレーションも長かった。原作に追いつきそうだったからだと思うけど。あんな感じだ。早くしてくれっちゅう感じ。人物描写もあまりに紋切り型で、かつそれが繰り返されるのには閉口する。
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ところで、作品内では、万俵大介と鉄平の対立に強く焦点があたっているけれども、実はこの二人は、仕事の成功を一番大事にしているという点で、あまり価値観に変わりはない。どっちが勝っても実はあんまり作品世界には影響はない。この世界を貫いているのは、偉いやつが偉い、でかいやつが偉い、金があるやつが偉い、女子どもは黙っていろ、っていう価値観。この作品(1963)が書かれてから40年くらいたつけど最後のやつ以外は、意外と今の空気ともマッチする。とうか、今はまた、こういう価値観を持つ人が増えてきているのかもしれなくて、そういうときにだからこういう話がドラマになるのかもしれない。