上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0(5ヶ月積んだ上でのレビュー)読めば「それなりに」面白いのだけど、それ以上に「面倒臭い」が……
2021年5月23日に日本でレビュー済み
今回はレビューと言うより発売から5ヶ月以上も積んでいた言い訳になるので、読まれる方はその点を弁えられる様に
「ロジカルウィッチ」が2015年1月
「シスコンアイドル」が2015年5月
「おるすばん妹」が2015年9月
「ゆめみる少女」が2016年6月
「ハツコイ少女」が2016年10月
「おでかけシスター」が2018年4月
「ランドセルガール」が2018年10月
「迷えるシンガー」が2020年2月
そしてこのシリーズ第11巻となる本作が2020年12月
内容が濃い作品である事は認めるし、書くのに時間が掛かるのだと想像するのも難しくない……が、本シリーズがまともなペースで刊行されていたのはせいぜい「ハツコイ少女」までである、というのは上に書き出した刊行時期からもお分かり頂けると思う。
「ライトノベルファン」といっても読む作品数というのは人によってえらく違う訳だから、中にはこの「青春ブタ野郎」シリーズだけしか読んでいないという人もおられるのかもしれない。だが、複数シリーズを並行して追っているという方であれば記憶力という限りあるリソースから1シリーズに割り当てられる量というのはおのずと限られてくる。
登場人物のキャラクター、ストーリーの流れ、前巻までに張られた伏線と思しき描写……長期シリーズを追う上で覚えておかなきゃならない事というのは意外と多いのだけど、テンポよく3、4か月ごとに新刊が刊行される作品であれば、新刊を読む事で上書き保存されていくので、それほど苦にもならない。
問題は本作の様に「4つ前」を思い出そうとすると4年以上記憶を遡らなきゃならない作品の方である。4年もあれば読書が趣味という方は数百冊は他の作品を読む事になる訳で、その間ポツポツと思い出した様に刊行される新刊で発表される新しい情報を記憶に上書きして「次は何時出るか分からん」という新刊の為に覚えておくというのはメチャクチャ面倒臭いのである。
こうなると愉しみにしているシリーズでも新刊が出た時に湧き上がる感情は「次はどんな展開になるのかなあ」ではなく「前巻までの流れってどんなんだったっけ?」「思い出すのかったるいなあ」の方である。
本作は主人公の咲太が妹である花楓が「思春期症候群」に巻き込まれ、母親は精神を病む事になった中学生時代のクラスメイトとの再会から始まり、本シリーズの根幹とも言える「空気による支配」と「空気に対して無力だった事への後悔」をテーマに据えた非常に興味深い内容なのだが……案の定「面白い」よりも「面倒臭い」が上回った事を否定できない。
本シリーズは前巻までに張った伏線を回収していく、というのを基本的なスタイルとしているのだけど刊行が4か月単位であったシリーズ初期であればこの手法は大いに有効だったと思う。だが、間延びしきった刊行ペースでこれをやられると「そんなん覚えてねーよ」という事になってとても楽しむどころではなくなってしまうのだと作者には申し上げたい。
なので物語の主役となる郁実も前巻までに登場させた人物ではあるのだが、その伏線を回収する形で物語を進めても「あー、なんかあった様な」とボンヤリした記憶を元にしたボンヤリした感情しか湧き上がらないのである。本シリーズをこの巻が出てから読み始めた、という方なら逆に短期間で読んでしまえるので覚えているのも困難では無いのかもしれないが、「バニーガール先輩」から追い続けたファンにはどだい無理な話である。
結局テーマ自体は面白いが、「薄れ切った記憶を思い出す作業」に追われ続けて「めんどうくさい、ああめんどうくさい」とボヤきながら読む羽目になった次第。次の巻がいつ出るのかは知った事では無いのだが、自分の記憶はそれまで持つのだろうか、という事が不安になり「次はもう買ったとしても面倒臭さが上回って読まずに終わるのでは」という事さえ考えてしまう一冊であった。