上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0すべての、死ぬのが怖い人へ
2017年10月1日に日本でレビュー済み
どうせ一度の人生さ~、という歌が流行ったのはもう何十年も前のことだろう(俺たちは天使だ、でしたかね。歳がばれますが)。それ以来、というわけでもないだろうけど、最近の日本では、人生は一度きり、精一杯楽しもう、みたいな考えが広く支持されているように思う。まあそれはそれで前向きで健康的な考え方だとは思うけれども、なぜかしっくりこない。人生が一度きりだとするならば、やはり死というのは恐怖以外の何物でもないと思うのです。本書では、人間は死んで生まれ変わる、という仏教の根底をなす死生観から、死とは?輪廻とは?愛とは?慈悲とは?はてまた性愛に至るまで、ダライ・ラマが簡潔明瞭に語りかけてくれます。ダライ・ラマはチベット仏教の最高指導者ではありますが、本書に限って言えば、ほとんどチベット仏教色はない。その意味では万人向け、敢えて言うならば、死を恐れているすべての人へ、とでもなるかと思います(裏を返せばある程度チベット仏教についての知識のある方には物足りないかもしれない)。以下に本文から一部を抜粋しますが、読後に死に対する恐怖がやわらぐ、とまで言っては言い過ぎかもしれませんが、いくぶんなりとも心が軽くなること間違いないと思います。
特別な修行も積まず、深く仏の教えに帰依しているわけでもない、ごくごく普通の人間にとって、死の恐怖を軽減する方法はあるのか。これはよく問われることである。もし、その個人が再生、転生の思想を信じず、ただ一度きりの人生、いわゆるこの<現世>しか認めないなら、死と取り結ぶ効果的な方法は存在しないと言わねばならない。もし、あなたがそのような人間であるなら、しかも、死を恐れているならば、こう答える以外にはないだろう。「死を思うな。考えるな。そして、現実に死が迫ったなら、酒でも飲み、残された時間を楽しめ。やがて人生と共に恐怖も終わる」(P34)