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カスタマーレビュー

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2012年1月8日
本書は初学者が不完全性定理を学ぶのに良い教科書だろうか。とてもそうは思えない。本書で学び始めたというレビューは多いが、理解したというレビューはない。最初に本書の特徴を述べ後に各項目を検討する。

長所
(1) ゲーデルの論文の日本語訳である。
(2) 価格が安い。

不満を感じる点
(3) 翻訳は分かりやすいとは言えない。誤訳もある。
(4) 註釈はあるが論理記号や専門用語の説明がない。
(5) 本書の大部分を占める解説に論文の内容の説明がない。

(1) ゲーデルの論文の日本語訳である。
オリジナルのドイツ語の論文がウエブ上で読める。ゲーデル公認の英訳が書籍で入手可能である。数学史に興味があれば原典に当たるべきと思う。しかしその後の数学の発展があることとゲーデルの説明が分かりやすいとは言えないことから、不完全性定理そのものに興味があればその後の発展を取り入れた解説書を利用すべきである。後述するように本書の翻訳には誤訳もある。なおゲーデルの論文の翻訳は本書だけではない。広瀬健氏と横田一正氏の「ゲーデルの世界―完全性定理と不完全性定理」に「完全性定理」と「不完全性定理」の両方の翻訳がある。

(2) 価格が安い。
ゲーデルの論文の翻訳と註釈の部分は文庫で58ページである。翻訳者の解説が233ページ。ただし解説はゲーデルの論文が与えた影響に関する翻訳者の見解であって、論文そのものの理解を助けるものではない。どこに対価を見出すかである。

(3) 翻訳は分かりやすいとは言えない。誤訳もある。
たとえば「命題[R(q);q]が証明可能ならば、それは正しいので、上記のqがKに属すことになり、(1)により¬Bew[R(q);q]が成り立つことになる。しかし、これは仮定に矛盾するのである。」(p. 19)の「正しいので、上記のqがKに属すことになり」の部分。論理に敏感な読者はここで迷うだろう。疑問は当然である。原文には「しかし」の意味のaberが入っている。くどく訳すならば「もしも命題[R(q);q]が証明可能だとすれば、その場合命題は正しくもあるのだが、しかし上述のようにqはKに属するので、(1)により¬Bew[R(q);q]となって仮定に矛盾することになる。」である。原文は次のとおりである。
Denn angenommen der Satz Bew[R(q);q] waere beweisbar, dann waere er auch richtig, d.h. aber nach dem obigen q wuerde zu K gehoeren, d.h. nach (1) es wuerde ¬Bew[R(q);q] gelten, im Widerspruch mit der Annahme.
否定の意味のバーが表記できないので代わりに¬を使った。Bew xはxが証明可能、¬Bew xはその否定である。ウムラウトはae、oe、ueと書いた。誤訳の原因は逆接のaberの見落としとnach dem obigenがqを修飾すると誤解したためだろう。だがその文が成立するなら、そこに主語のない文が現れることになる。翻訳文の論理が矛盾していることに気付かなかったのだろうか。

(4) 註釈はあるが論理記号や専門用語の説明がない。
数学や自然科学の専門家が訳すなら、文庫の性格も考えて論理記号や専門用語に註釈を付けるのが普通だろう。ゲーデルの論文は∃をE、∀をΠとするなど、論理記号が理科系の学生が一般に習うものと異なっている。しかし本書の場合説明は一切ない。理論の内容より表記の問題で難解さを増している。

(5) 本書の大部分を占める解説に論文の内容の説明がない。
本書の解説は論文の歴史的意義に関する著者の見解である。論文の内容を解説したものではない。解説が主でゲーデルの論文の翻訳が従と感ずる。たとえば完全性定理と不完全性定理では完全の意味が違う、という初学者向けの注意はありふれたもので、他の本から持って来て同じことを書くことが誰にも出来るが、完全性の意味の違いの具体的な説明は誰にでもは出来ない。専門家の解説ならその点まで踏み込んでもらいたかった。

蛇足になるが、今一度本書の「まえがき」を読んでほしい。専門家だからという思い込みのない素直な目で読むならば、何とも非論理的な文章である。たとえば∃xP(x)→∀xP(x)という推論がある。有名大学の教授だから正しいというのは、三流大学の卒業生だから間違いだというのと変わらない偏見である。

ゲーデルの論文の翻訳は他に広瀬健氏と横田一正氏の「ゲーデルの世界―完全性定理と不完全性定理」がある(同じ書名の翻訳書もあるので注意)。そちらは「完全性定理」と「不完全性定理」の翻訳を巻末の付録に載せ本文がそれを理解するための準備段階と別の証明とである。

***

本レビューには著者の林晋氏からのコメントがある。小生の回答もある。林氏はその後自身のブログで「ドイツ語の基本的な読み方が身についておらず」等と小生を非難した。林氏の勤務先の大学が開設したサイトである。大学当局は何と考えるのか。しかも林氏は小生のレビューに自由にコメントできるにも関わらず、その後反論せず、ブログでそのような一方的な非難をする。その上そのブログの記事にはコメントできない設定である。

ゲーデルの不完全性定理を理解したいのであれば本書よりも良い本がたくさんある。数式を厭わないなら、上に紹介した広瀬氏と横田氏の本が良い。数式にアレルギーがあるなら、初心者向きの解説であるが、野崎昭弘氏の『不完全性定理―数学的体系のあゆみ』を勧める。ゲーデルの論文の果たした役割についての林氏の考えを知りたいなら、本書である。論文の翻訳を読みたいだけなら、広瀬氏と横田氏の翻訳が本書に優ると思う。数式が殆ど登場しない本は『ゲーデルの定理――利用と誤用の不完全ガイド』がある。ただし、要求される思考力の程度は高い。
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