カスタマーレビュー

2012年11月26日に日本でレビュー済み
評者は「戦士編」のころ、高評価のレビューをポストしたことがあり、タイトル全体を低く評価しているつもりはありません。
ただ、本巻では違和感を感じる部分がありましたので、記してみます。

主人公トルフィンは本巻で「力(暴力)」を使って逃亡奴隷を助けるか否かという決断をせまられます。
その岐路に立たされた場面で、彼は仲間との対話の中で、彼の置かれている現状からすると相当なメタ・レベルに立った言葉を発します。

読者である自分からすると、彼の言は随分「近代的」な問いのように思えます。
いかに過酷な経験をしてきたからと言って、人間がその文化的なくびきを脱して、そう簡単にメタ・レベルに立てるものでしょうか?
トルフィン自ら言うように「ノルド人のとっては多くの敵を殺して、多くの略奪品を持ち帰った者ほど尊敬され」「それが当たり前」なのです。それをそう簡単に超克することができるのならば、人類はもっと早くに進化できていたように思えます。

同じ幸村誠氏の「プラネテス」でも、あるいは他の作品でも、登場人物がメタ・レベルに立った発言をすることはあります。
それをどう受け止めるかは読者自身によるところではあるでしょう。しかし、こと歴史物では、時代的制約のなかでドラマを描くのがドラマツルギーの装置になっているのですから、そうそう登場人物に時代状況を超克されてしまうと、何のための歴史物なんだろうか、という思いが先にたってしまいます。
本作もディティールはフィクションとは言え、レイフ・エリクソンほか、実在の人物やヴァイキングの文化など、史実に沿った展開をしてきて、それに期待をしていただけに本巻は少し残念でした。
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5つ星のうち4.8
星5つ中の4.8
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