カスタマーレビュー

ベスト1000レビュアー
2021年5月10日に日本でレビュー済み
基本コンセプトは本巻も変わりません。
膨れ上がる脅威に対するややシリアスな軸を一本通しつつ、これまでの巻と同様に現代における妖怪と人間たちの喜怒哀楽や新解釈が時事ネタを通しコメディタッチで描かれて行きます。
前巻は小粒が並んでいた印象でしたが、手法やプロット作成が板についてきたためか本巻ではキレや深みを持ったエピソードが並んでおり、個性を失わずにクオリティが上がってきた感じがします。
特に印象的なのは準レギュラーであるキャラクターが登場する片耳豚のエピソードで、その生態を活かしつつ現代世相風刺に古代中国史の挿話を組み込みキャラの描写を効果的に果たしています。
その上示される主題はこの作品の根幹を成すものであり、このエピソードは第七巻の白眉といえるでしょう。
番外編を除けばこの巻の締めに位置していますし、おそらく作者も手応えを感じている一編だと推測します。

その番外編を任された前巻からの新キャラクターも存在感をぐっと増しています。
彼女が推す作品はタイトルしか知りませんでしたが、ちょっと手に取る気になったのは事実ですしレギュラー化してもいいコーナーだと思います。
私は作者個人に関して情報を得ていませんが、件の作品や一部妖怪のデザインなども含め取り上げられるパロディの元ネタ群から察するに昨日今日の若手とは思えません。
ただ今回は鳥月さんも漏らしているようにオチそのものが元ネタである傑作SFを引用していたり、有名な怪談をほんの一部だけ改変したエピソードがあったりで、この匙加減はちょっと気になるところ。
パロディはあくまで主題を提示する手法に止めておかなければならない筈で、ただ誂え直しただけのリメイクになってしまってはその意味を失いかねません。
時事ネタを扱うには鮮度の問題も付きまとい、この作品のとるアプローチはなかなか難度が高い選択だとは思いますが、七巻まできた以上安直な路線変更なくコンセプトを貫いてほしいところです。

順調に作品内世界の枝葉は拡げられている上に手腕が熟れてきた様子も窺え、少し気になるところも出てはきましたが、先へも期待です。
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商品の詳細

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