カスタマーレビュー

2019年6月7日に日本でレビュー済み
 ラブコメ作品は猫に似ている。
 猫は基本的に可愛い生き物だ。見た目の平均点が高い。何をしていてもどこかしら愛らしさがある。何もしていなくても、猫がそこにいるだけで幸せだよね! という猫愛好家もいらっしゃるだろう。
 何もしなくても可愛いからOK=存在自体が利益を生む=猫を使っておけば儲かる可能性がある。お金の匂いに敏感な人間は、猫を商売に利用するだろう。
 かくして世は猫ビジネスで溢れ返り――当然のように淘汰が起こる。存在するだけでラブリーハッピーだった猫が、存在するだけでは高く評価されなくなるのだ。
 ただでさえ可愛い、けれど可愛いだけでは最早魅力にならない存在。猫達にいかに新たな価値を付与するかが、商売人の腕の見せ所である。

 今作『五等分の花嫁』は、ミステリー的な面白さを強化した新しいラブコメだ。
 幾らかのラブコメには、元々ミステリーの要素――主人公は最終的に誰と結ばれるのか?――が備わっている。特にメインヒロインが一人ではないタイプのラブコメには、強く見られる要素だろう。最新の連載分を追いつつ、「最後はAとくっつく」「いやBだ」と言い合うのは、この種のラブコメの楽しみ方のひとつだ。
 しかし従来のミステリーなラブコメには問題点があった。話のテコ入れのためか編集部の方針か、恋人候補の女子が後から後からわんさか増えていくのだ。際限なしに増やすだけ増やして、満遍なくご担当回を配して、その間メインストーリーには大きな進展は見られなくて……ミステリーとしてもラブコメとしても、中途半端な駄作の出来上がりである。ミステリーならば、後出しで容疑者を増やすべきではない。ラブコメならば、ヒロイン一人一人に割く時間を減らすべきではない。
 いかにヒロインの数を絞りつつ、ミステリーとして上質に仕上げるか? 『五等分の花嫁』は、この問題にひとつの答えをくれた。
 物語の冒頭に、花嫁の姿をきっちり提示。ただしヒロインを一卵性の五つ子にすることで、読者に正答をわからなくさせたのだ。これならば後出し容疑者を封じ、五人の魅力と謎解きだけを存分に描いていける。加えて入れ替わりや見間違いといった、ミステリーにおける一卵性多生児のギミックも取り入れられる。発想の勝利と言えよう。

 アイデア以外にも、画力やストーリーそのものも優れている。五つ子それぞれの個性と愛らしさを、絵そのものと作中の行動の両方で描けている。主人公も(最初は家庭教師のバイト代目当てとはいえ)比較的能動的で、人任せにしないところに好感が持てる。なかなか思い通りに事が進まないのもいい。
 絵柄が繊細で露出のあるシーンも描き方が上品&脈絡があるので、露骨なエロに嫌悪感のある方にも向いているのではないだろうか。

 難点は背景カットがしばしばわかりにくいこと(写真を絵に起こしているのだろうか、線が細くてどういう場所なのかが見えにくい)と、現時点(当方既読は三巻まで)ではまだ各キャラクターの過去の掘り下げが浅いこと、ラブコメでありながら恋愛の必要性が薄いことか。
 平均点は優に超えているので、このまま独自の色を出して、物語の停滞なく突き進んで欲しい。

 アニメは未視聴。時間のあるときに続巻も買って読み進めたい。
 個人的には家庭派番長の二乃と、抜けているようで要所要所でのストーリーリカバリーの巧みな(三玖攻略に必要な戦国武将の逸話を主人公に最終的に教えた、花火大会での手持ち花火)四葉が気になっている。
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