カスタマーレビュー

2010年1月13日に日本でレビュー済み
 著者の2冊目の単行本。デビュー作『生きるススメ』(2003年 宙出版)同様、素人漫画家としてWEB上で発表していた漫画を加筆・修正の上まとめた短編集。全体の雰囲気も1冊目と似ている。

 20代後半の社会人が主人公とされている作品が多い。内容的にも、それくらいの年代の男女に最も共感を得られやすいだろうと思う。人生にはつい周囲からの期待に応えようとしてしまうような真面目な人が陥りがちな罠というものがあるのだと思う。そんな「罠」からの回復を後押しするような作品が多い。

 「あとがき」で著者は、「2冊目はもっとブラックな本にしたい…」と思っていたと書いている。ところが逆に私の印象としては、1冊目のテーマが「生と死」だったとしたら、本作では「生きる」という要素がずっと強くなっているような気がする。「死」の要素が抜けて何故ブラックな色合いが強まるかと言えば、生きるか死ぬかが本質的には自分ひとりの問題であるのに対して、いざ生きると決めたとき今度は(親や恋人との)親密な対人関係をどう構築・維持していくかが自分ひとりではどうしようもない厄介な問題として現れてくるからだろうと思う。そして、そういった親密な他者との関係に翻弄されてしまう人というのが世の中には意外と多い、ということなのだろう。そういう、対人関係が億劫になってしまっている人を主人公としたリハビリの物語、として読んだ。

 この本は読者を選ぶかもしれないな、とも思う。「親密な他者との距離のとり方」という問題で悩むのは長い人生の中で言えば比較的限られた期間なのではないかと思うし、この本に出てくる主人公たちは事態を打開するために何か具体的な行動を起こすわけでもないからだ。

 人間には傷ついた自分自身を癒す力がある。ただ、その力が働き始めるには少々時間がかかるし、何らかのキッカケが必要な場合もある。本書に後押しされる読者は、ちょうどそんな時期にある人ではないかと思う。
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