カスタマーレビュー

2021年2月11日に日本でレビュー済み
 世界で初の株式会社と言われる東インド会社。

 若い時、株屋で営業の仕事をしていたものの、歴史については全く不勉強だったため、「君、東インド会社、知っているよね?」とお客様に問われても、「はい、全く知りません!」と自信満々に断言して笑いを取るくらいしかできなかったものです。

 年を経て改めて歴史を学んでみると、なんと東インド会社が一つではない!驚きました(レベル低くてごめんなさい) イギリス、オランダ、フランスが類似のコンセプトの会社を(中身は違うけど)営んでいました。

 本作品は、そのような東インド会社について詳述した読み応えのある作品です。

<大航海時代の東西を東インド会社という横糸でつなぐ>
 本作でためになったのは、東インド会社が隆盛を極め衰退していった時代を、各会社ごとにヒストリカルに見るのみならず、時に会社を並列に比較したり、同時代を横でヨーロッパ、東アジア・日本と、俯瞰する試みも行っていることです。縦横無尽。

 長崎の出島は、江戸時代はオランダとの貿易拠点であったことは多くの方がご存じだと思います。でも、その時のオランダはじめヨーロッパや他のアジア地域がどのような状況であったかは、なかなかピンとこないのではと思います。
 スペイン継承戦争や宗教改革を背景にイギリスの私掠船が増加、オランダはアジアとの独自の交易ルートが必要になりました。東シナ海では鎖国をしている日本の沖合で倭寇が存在感を示し、明の海禁令をよそに貿易業に勤しむ。列強は時に武力で、時に乞われて、インド、マレーシア、インドネシアに拠点を構え、交易を盛んにし、アジアでは東西が混じりゆく社会が形成されつつあった、などです。
 このような、いわゆる「横串」で歴史を見ると、歴史のうねりのようなものが感じられ面白いなと思います。
 
<当時のマージナルな存在の取り扱いの違いも興味深い>
 もう一つ本作のカバレッジで興味を引いたのは、西洋の進出と共に必然的に生まれてくる混血児やその二世など、マージナルな方々の記録にスポットをあてていることです。
 本文ではイタリア人を父としたお春について記述しています。父親が亡くなったとたん、母・姉とともにバタヴィア(ジャカルタ)に流刑。しかし、お春はその後同じような混血児と結婚し使用人を9人使うほどの生活を営んだそう。もう一つの例は、長崎オランダ商館長と日本人女性のもとに生まれたコルネリア。このケースも父親の死後にバタヴィアに流刑(母親は再婚しており本人のみ)。本人はその後オランダ人と結婚し、財を成し、夫の死後に再婚したものの、再婚した夫と財産権でもめて最後にはオランダで裁判までしたそうです。
 400年も前にハーフが経験したダイナミックな逸話に驚くとともに、その苦労や苦難が偲ばれます。自分も外国人の連れ合いを得、ママ友達のイジリ以上いじめ以下の発言を耳にしていたので、ハーフの方々の生き方に自分の子供達の行く末を重ねつつ、シンパシーを感じながら読んでしまいました。

<おわりに>
 上記は内容の本の一部しか案内していませんが、それ以外にも大航海時代の先駆けとなったポルトガル商人(相当なワルです)やイエズス会(上智大学)、また彼らとムスリム商人とのやり取りなど、東インド会社の航路に当たる国々との音信も描かれています。内容はてんこ盛りなのですが、ボリュームがあり過ぎなのか、後半の7, 8章でややダレた印象がありました。

 冒頭でも述べましたが、世界初の株式会社ですが、株とか金融という観点では特段みるものはないと感じました(へーなるほどという感じ)。寧ろ商社の本性やその暴力性を見て取る好材料であると感じました。勿論、歴史の読み物として純然たる歴史ファンには諸手を挙げてお勧めできます。
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