カスタマーレビュー

2018年3月12日に日本でレビュー済み
主人公から診察・施術を受ける患者の反応が別の物を想起させるイケない医療行為シリーズ・第四巻。
今回は前巻における物語の舞台リンド・ヴルムの代表スカディの偽心臓除去手術の後始末回とでも言うべき内容。
スカディの心臓に擬態していた物の正体が「ドッペルゲンガー」として町のあちこちに出没し、
その後を追う主人公グレンたちの姿を追っている。

……とはいえ、読者のみなさんが期待するのはそういうお堅い方面じゃなく、イケない想像をしてしまう医療行為シーンの方かと。
うん、今回ものっけから突っ走っていますな。
診療所の自室で家具の角部分や床に体を擦り付けては「ん……ふっ、うっ」「んっ!あぅンっ!んふっ!」と切なげな声を上げる
サーフェの描写はまさに「角〇ナ」……いやいや、いかん、これはラーミアの生態として欠かせない「脱皮」シーンであって
別の物を想像してはいかんのである。

この「脱皮」シーンの面白い所はサーフェのお手伝いをしている「妖精さん」たちの言語事情が解説されている点。
この「妖精さん」人間や魔族と話す時に基本的には「おまかせー!」「がんばるー!」という単純な言葉しか発しない
まさに田中ロミオの「人類は衰退しました」そのまんまな姿しか見せられないのだけど、そんな彼らが実は
膨大な情報を処理する優れた頭脳とその情報量を同族同士で瞬時に交換する精神感応的なコミュニケーション術を持つが故に
言語能力が衰退してしまい優秀な頭の中でどれだけ「言いたい事」が生じても上記の様な単純な言葉しか発せられないという
もどかしさに悩み続けるという種族特有の問題を描いた辺りは本作が単なるエロ売り作品ではない事を証明しているかと。

物語の方は上でも書いた通り、リンド・ブルムの至る所に「ドッペルゲンガー」と思しき、
そこに居る筈の無い知人の姿を模した「何か」が出没、
その正体が前巻で除去手術を施したスカディの偽心臓かもしれないという事で正体を探りつつ
保管してあったクトゥリフ師匠の病院に連れ戻すためにグレンが跡を追うという展開に。
スカディの偽心臓かもしれないが「確定診断」は出来ないので一つ一つ可能性のある対象を潰していく
「除外診断」みたいな方法を取っているのはさすが医療物という所だろうか?
その結果突き止められた「ドッペルゲンガー」の正体は……うーん、クトゥルフ好きな作家さんは多いのだけど
ラミアやアラクネ、ケンタウルスみたいな筋目の通ったモンスターの中にクトゥルフ系が混じるのは個人的にはちょっと疑問。
統一感という奴はもう少し大切にして欲しい気もするのだが、ここいら辺は趣味の問題か?
結果的にヒロインがまた一人増える結果になったが、「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門みたいなロボ子っぽいタイプを
ファンタジー系作品に出すのも……これも趣味の問題なんだろうな、うん。

ただ、この巻どうにも話の繋ぎがぎこちない点が散見されるのが気になった。
クトゥリフ師匠から「ドッペルゲンガー」騒動についてグレンが話を聞かされるシーンは
グレンが過労で倒れてクトゥリフ師匠の病院に入院しているという状況なのだけど、主人公が倒れるという
結構な大事なのに、その場面を描かずいきなり「倒れて入院していた」という場面に持っていくのはどうなんだろう?
「あれ?読み飛ばしたのかな?」と読者を慌てさせるのは些か不手際だと思うのだが。

また終盤で「ドッペルゲンガー」が人魚のハイネに化けて水路街の中でハイネに保護されていたという場面も
主人公が追いかけていた対象の居所が明確になるという割と重要なシーンなのだが、
ハイネがどの様にして自分を模した「ドッペルゲンガー」と出会い、保護する関係に至ったのかという
本来であればきっちり描くべき場面が直接描かれていないので話が飛んだ印象を受ける。
どうにも話の繋ぎ方がぎこちない。

作者の折口良乃も結構なベテランなのだからこういう話の繋ぎ方が読者にぎこちなさを感じさせるかどうかは
判断できる能力を持っていると思うんだが……なんでこうも一巻の中で何度もぎこちなさを感じさせる書き方になったのだろう?
どうにも違和感の残る読後感を残した第四巻であった。
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5つ星のうち4.5
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