カスタマーレビュー

2019年3月31日に日本でレビュー済み
この巻のラスト、朝は、「久しぶりの、たぶん 両親をなくして以来、はじめてのおだやかな、いうなれば幸せな夜だったように思う」と言っています。朝と槙生の関係は、朝の言う「群れ」の形成に向けて、1段階近づいたのだと思います。

朝は、これまで槙生を親とは思っていないにも関わらず、槙生との関係を「親子」になぞらえていたように見えます。親は、自由にのびのび育てたいと言いながら、一定の強制を子供に課すもの。我が子が社会に適応できない人間に育つことを恐れるからなので、これは仕方ないと思えます。

故に、朝が母親を嘘ばっかと言うのは、母親にこの恐れが強く出ていただけで、程度の多少はあれど、親というものは皆、このような矛盾した言動を取らざるを得ない。
一方、槙生は養子縁組しておらず親でさえない立場です。故に言行を一致させることができ、嘘は言わないで済ますことができます。

言行一致…これは親子では難しいが、槙生は親ではない故にできるのです。このことに朝が気づき、槙生との関係を「親子」になぞらえることをやめたので、「幸せな夜」を感じることができたのだと考えます。

これは朝と槙生の同居開始のタイミングというか、物語の設定が、義務教育が終わる中学卒業間近であったから可能であったと思います。もし朝が小学生ならば、絶対的な保護と教育が必要な年齢なので、保護者が必要なので、このような関係は成立しません。親であれば、子供の教育のみならず、子供が健やかに成長できるよう保護する責任があり、これは、特に小学生までは非常に大変なことで、この責任を負っているからこそ、親は子供を叱ることができるのです。そして、このことに槙生は気づいており、「わたしは彼女のいちばん大変な たとえば赤ん坊の頃とかには…関与してないから一切」と言っています。だから親にはなれないということです。これを槙生に言わせている物語構成は、さすがです。

色々ありますが、この巻では、最終ページの朝のセリフに向けて物語が進んでいくところが最大の見所になります。
14人のお客様がこれが役に立ったと考えています
違反を報告 常設リンク

商品の詳細

5つ星のうち4.8
星5つ中の4.8
299 件のグローバル評価