カスタマーレビュー

2017年4月29日に日本でレビュー済み
新刊が出るのを楽しみにしている数少ない作品の一つです。
四女すずのサッカーの話が背景に退き、これまで地味な扱いだった
三女チカと、アフロ店長の関係が前面に出てきます。

未婚の妊娠は、漫画やドラマでよく扱われるテーマです。つまらない
メロドラマなら、店長はチカの妊娠を知らずにエベレストに再挑戦して亡くなって
しまい、残された者が悲嘆にくれるというストーリーでしょう。そんなあざとい
ドラマは今でも溢れていますが、読者は飽き飽きでしょう。

海街の主人公たちは、お互いに大切な家族・友達・恋人・知人を思いやり、
相手の心に一歩踏み込んで意見します。問題を抱えた当人も問題から逃げずに
きちんと向き合います。こうして、日常誰もが遭遇する問題を悲劇になる前に
ひとつひとつ解決していきます。実際、我々の人生も多かれ少なかれそんな感じです。
あざとく問題を引っ張ることなどありえません。だから共感できるのです。

本巻で印象的だったのは、チカがすずに妊娠のことを口止めしたことについて、
長女幸が「嘘をつく重荷を負わせてすずを傷つけた」と指摘したところです。
本シリーズの第一話でも、すずの父親の告別式の出棺の挨拶を継母の陽子が
すずに押し付けようとしたときに、幸は「これは大人の仕事です」ときっぱり
否定しました。世の中には大人が果たすべき責任、守るべきルールがあるという
ことも、本シリーズの根底に流れるテーマの一つに違いありません。

説教くさくならないのは、諭している本人もまた別の弱さを抱え込んでおり、
お互いに支え合う関係だからでしょう。また、全編を通じて鎌倉を始めとする
舞台となる土地の自然や風物が心を洗ってくれます。本巻なら、すずが進学を
決めた静岡の茶畑。爽やかな読後感です。今から次巻が楽しみです。
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商品の詳細

5つ星のうち4.7
星5つ中の4.7
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