カスタマーレビュー

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2018年9月24日に日本でレビュー済み
(単行本第8巻まで購読した上での今巻の感想)

今巻で登場する有名人はボニーとクライド、玄奘、真田幸村。スピンオフの方では大塩平八郎、近藤勇、東条英機。

歴史上の有名人が命を費やす最後の瞬間に、悲観症なマスター(店長かつ料理人)が経営するレストラン「ヘヴンズドア」に足を運び、その人の心境に合った、望みの料理を出してもらうというお話。「人生の最後の食事には何を食べたいか」というネタ話を通し、有名人の人と成りを紹介するような偉人譚のような構成でもあります。当人にとっては「最後の晩餐」なのでしょう。つまり満足のいく料理を食し、成仏をするという形です(少し時系列は前後しますが)。ただし3巻あたりからは、マスターが足を運ぶ場所であればレストラン内でなくても有名人がやってくるようになります。料理人が時を超えるのではなく、料理人の元に有名人が足を運ぶという設定は斬新さを覚えますし、違和感を覚えない話の構成や有名人の描写こそが、今作品の最大の魅力です。

今巻ではマスターが茂野月嬢と見合いをしたこと(マスターは乗り気ではない)ことが店側にばれ、ジャンヌはもちろん他の店員も含めひと騒動となりますが、そのさなかにもっと大きな騒動が起き、半ば有耶無耶になります。

ボニーとクライドでは生き様と刺激について、玄奘は哲学的な話や悟り、真田幸村では人の信と臨機応変さについて語られます。それぞれが本来のエピソードをベースにしたものですが、設定に合わせる形で無理なく語られており、違和感をあまり覚えず楽しめるのはいつものお話。他方、今巻では特にマスターの「正体が見えない感」が強く出ており(沢庵和尚と同じ悟りに達していた件)、実は大人物なのではという雰囲気も覚えさせます。

今巻でも話の根幹部分で色々と動きがあります。ジャンヌが持っている飾りと同じものが経年劣化した形で出てきたという話は以前ありましたが、ジャンヌと茂野月嬢が手を触れると共鳴反応を起こして双方とも倒れてしまいます。二人の間には浅からぬ、そして大きな背景がありそうです。また、婚約話から派生して店舗拡大の流れとなり、渡りに船の形で勝手に支店が出来たりします。その場しのぎというか、成り行き任せで何となく上手く行ってしまうのは少々出来過ぎですが。

この作品、に限らず藤栄先生の作品に共通することですが、登場人物に根っからの悪人、読んだ後に後味の悪い人物や話の展開が無いのも魅力の一つ。盛り上がりに欠ける、リアリティが無いとの意見もあるかもしれませんが、そのようなものを必要としない構成で高い完成度を見せているのも事実だと思います。また、定番のネタや時節ネタ(今回も騎馬戦の時に出てきた、どこかで見たようなエライ人達っぽいのが登場し、同じような対立をして巻き込まれます)も、単なる偉人伝的なものに留まらせないようなエッセンスとして楽しさを上乗せさせてくれるのがポイントといえるでしょう。

後半は前巻から登場している、インターミッション的なスピンオフの作品「最後の小料理屋」の収録。マスターの従兄妹の成雪嬢が小料理屋の「まほろば」で働いていると、「ヘヴンズドア」と同じように有名人がやってきて料理を望むというもの。ただし日本人男性でくせが強く、成雪嬢にマイナスの影響ばかりを及ぼし、しかも対価が無くても去っていきます。コント色が強く、主人公がヘマをやってオチになるというパターンです。同じ仕組みによるもので、スピンオフだからということなのでしょうが、ちょっと本編の雰囲気とは合わないかな、という気もします。
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