カスタマーレビュー

2014年8月20日に日本でレビュー済み
カバー絵だけ見ると少女漫画ライクなライトファンタジーに見えてしまうかもしれませんが、非常に奥行きある人間模様を描き出し、重厚なファンタジーやSFに不可欠な「架空の社会構築と設計」をしっかりやっている良作です。それでいてウンチクと設定が先走った「設定漫画」でもありません。

この作品は、特徴や良いところを伝えるのが難しい話です。あらすじを読んだだけでは一見、凡庸に聞こえてしまうでしょう。それでもあらすじを申しますと(少しネタバレになりますが・・)

「主人公は、辺境 エカリープの領主の嫡子 DX(=これが名前)という十七歳の少年。彼は、明るい15歳の妹・イオンと、義弟のニンジャ・六甲らと、日々武術の鍛錬に明け暮れている。父は、引退した元将軍、母は凄腕の傭兵。DXは忍術と傭兵の技と考え方を併せ持っているため、歳不相応のスキルと機転が備わっているが、普段は「ゆるんで見える」ため、初対面の人間に見くびられる傾向が強い。彼は将軍の息子でありながら騎士の考えに染められていない、貴族らしくない貴族である。DXは地元の大樹に封じられたマリオンに恋をする。彼女はDXが生まれる前に火竜を封じるために大樹と一体化した洞詠士で、彼女を救い出すためにDXは封印を解いて竜と戦う計画を立て始める」・・くらいまでが一巻後半から2巻中盤までと言ったところでしょう。

あらすじに「恋のための竜退治」が出てくる時点で、ありがちなヒロイックものに思えてしまう人も多いでしょうが、竜退治は単なるプロローグや「つかみ」と言っても良い部分で、この作品の神髄はそこではなく、ドラマと策謀の交錯にあります。またストーリーの本番は、彼がこの竜退治の後、王都のアカデミーに入学してからです。そのため、読むのならば4,5巻あたりまでを一気に読んだ方が何倍もおもしろいと思われます。

このアカデミー編に入ってからは、騎士・王族・貴族・平民という生まれと立場(それ故の考え方の)違いを非常に上手くストーリーに練り込んでおり、良質で奥行きのある味わいのドラマを展開していきます。DXの大仰な肩書きは、良くも悪くも目立つもので、人の噂と関心、そして事件と騒動の中心となる種になり、時に政治的、商売的、そして恋愛的な、いくつもの「駆け引きと戦い」が、重層的なイベントとして読む者を引き込みます。
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5つ星のうち4.7
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