カスタマーレビュー

2020年10月2日に日本でレビュー済み
この漫画、ラスボスである無惨戦から読みはじめたのだが、とても面白い漫画である。普通の漫画のラスボスにはラスボスに相応しい目的…世界征服とか”悪にとっての大義”みたいなものがあるもんなんだけど、無惨には何もない。生き長らえる事だけである。また、ラスボスには普通、”悪の求心力”とでもいうべきものもあり、こいつの言ってることは倫理的に正しくはないのだけどそれに魅了される者もいるんだろうな、と思わせる存在感のようなものも持っているのが常なのだが、それもない。性格はただの小物で、物理的に強いだけである。頭脳もそんなに優れているわけでも無いらしく、「しつこい蝿どもが」と苛立ち続けるが、相変わらず戦術は何もなく、腕を振り回し続けているだけである。ただその物理的強さがめっぽうなので、勝てないわけである。
前巻にて、北斗の拳で言えばジャギやアミバがラオウ並に強いようなもの、と書いたが、ジャギどころか雑魚モブのモヒカンなのではないか、とすら思えてくるのだが、一方で無惨と闘う炭治郎らには、過去から現在へと、命をもって繋いできたものが山のように積み重なっているのである。背負っているものの重さが別次元なのである。これが無惨からすると「しつこい」の一言で片付いてしまうのだから、彼の薄っぺらさが理解できようというものである。
そんな彼らの繋がれた想いに全力のちからを乗せても出来ることは夜明けまでの時間稼ぎだけである。”時間稼ぎをするだけが唯一の勝機の戦い”を高度な頭脳戦として描いた漫画ではハンターハンターの討伐軍対ユピーが挙げられるが、本作の場合、理屈よりは登場人物の感情にフォーカスしており、ハンタのような論理は少なくとも燃える展開になっている。理詰めで描いた漫画こそが正しいという訳ではない。少年漫画なのだから。
そして想いを繋いだ全力をもってしても及ばないかと思われたところに珠世の仕掛たものが発動する。既にこの世を去った者さえも無惨の生への執着に絡みつく。此処から無惨が取る行動も漫画のラスボスとは到底思えないものだが、「少年漫画に於ける新しいラスボス戦のかたち」を提示してみせていると思え、これがきちんと漫画としても面白いので、そろそろ終わりらしいけど次巻も読もうと思わせるだけの内容である。
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