カスタマーレビュー

2021年3月4日に日本でレビュー済み
この漫画のストーリーは一見、衝撃的な展開をバカみたいに繰り返してるように見えますが、それはあくまで表面的なこと。そこだけ見ていると、「はいはい。ただ人をバンバン殺せばいいと思ってる程度の低い行き当たりばったり漫画ね。」と誤解してしまうかもしれませんが、実はこの物語は現代の若者の苦悩をとても巧みに漫画に落とし込んでおり、それがこの漫画の真の魅力と言っても過言ではありません。

無知ゆえにマキマに騙され利用されるデンジの姿は、社会に押し潰されそうな読者の心にグサリと突き刺さり非常に共感しやすい上に、
「絶望のどん底に落とされたデンジはどうなってしまうのか」というのが気にならずにはいられません。こういう鬱屈した状況からどうやって幸せを掴み取ればいいのか?何が必要なのか?と。

作中で示されている1つ目のキーは、「愛情」です。

デンジはパワーとの家族的な絆によって正気を取り戻し、単純な力ではなく愛の力によってマキマを倒します。

デンジ=現代の若者
マキマ=社会そのもの

とすると、デンジがマキマを料理して消化していくというのは、若者が現実社会と折合いをつけて自分なりの幸せを見つけることのメタファーとも取れます。

面白いのは、結局は両者とも愛情への飢えが行動の根本原理となっている、要は似た者同士なこと。デンジは母性愛を求め、マキマは他者との対等な愛を求めています。(2人が共に涙した映画のシーンは、親しい人物が抱き合っている場面)

結局は、人と人との愛情や絆が精神的充足をもたらすということを言いたいのだと思います。

あともう一つ示されているのが、「教養」の重要性。

デンジはマキマの策略により一度は思考を停止してラクになろうとしますが、それが災いしてもっと最悪の事態を引き起こしてしまいます。そこから考えることの大事さを身をもって学んだデンジは、最後は自分の頭でしっかりと考え抜いて解決策を見出します。

つまり、教養とは自分で考える力のこと。

もちろんその材料に知識や経験が必要となります。最後にはデンジは学校に通うことになっていますね。

チェンソーマン的「幸せな生き方」をまとめると、

・幸せになるために必要なのは他者との繋がり(愛情)と生きていく為の教養(考える力)
・デンジ(=困窮する若者)は考え抜いた結果、深い愛情によってマキマとの戦い(=現実社会との相克)を解決した

ということになります。

デンジは最終的には、

・質素ながら衣食住揃った生活
・愛すべき家族(ナユタ)
・教養(自分で考える力)
・仕事と趣味の両立(ナユタを守りつつ、デビルハンターとして生活費を稼げる)
・目標(地獄にパワーを探しに行く)

と自分なりの幸せを得ています。

もう「皆が欲しがる財宝見つけに行こうぜ!」みたいな動機は、今どきあまり現実味がないと思っている人も多い筈です。そういうビッグドリームではなく、ささやかな自分なりの幸せを求める。これがデフレ時代のリアルであり、この漫画が支持される理由の一つだと思います。

実はチェンソーマンの物語って、少年が大人の階段を登っていくという少年漫画の超王道なんですよね。デンジにはデンジの「努力・友情・勝利」がある。
イロモノに見せかけておきながら、それをこれほどのリアリティで描くというのがまさに「このマンガがすごい!」です。第2部が待ち遠しくて仕方ありません。
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