カスタマーレビュー

2016年10月14日に日本でレビュー済み
音楽以外には徹底して無関心な青年・ヨタカはある晩、道路を跳んで逃げまわる奔放な少女と邂逅する。
どこか猫を思わせるその瞳は鮮烈な印象を残した。
敬愛するマスターがいる音楽喫茶『ライアーバード』で、ヨタカは彼女・コトに再会する。マスターとも旧知の間柄のよう。
はじめの印象は互いに最悪だったふたりだが、胸の奥で深まる関心は抑えられずー。

ギターにストイックで無愛想なヨタカにとって、唯一、心を開くことができる空間・ライアーバード。マスターは子供のころからのあこがれで、そのギターの音色には魅了されどおし。
そんなマスターに可愛がられ、住みこみはじめたコトの存在が面白くない。
さらには「一度、聴いた音は完全に覚えることができる」という天賦の才に、サリエリよろしく妬みが湧きあがる。

嫉妬や羨望は常にヨタカの側にあるようだけれど、その実、独特の感覚を持ったコトもまた、他人のように「ふつう」に振る舞えないことに悩み、憤り、
ヨタカの音楽への真摯な取り組みや、理論づいた思考を手にすることができず歯噛みしている。
「音が目に視えてしまう」という特性も彼女を孤独に追いやっており、やり場のない怒りは、現実と折り合いをつけられるヨタカに向かう。

そんな正反対の2人の衝突から生じる化学反応に、マスターはなにやら期待しているようだが…?

…ここまでストーリーに触れましたが、以下、表現という観点からも。

線の1本1本は弾んでおり、曲線の美には溜息が出ます。
セリフやコマには一分の無駄もなく、キャラクターのちょっとした所作にも細心の注意が。
清新な描写はこれでもか、というくらいに繰り出されますが、やはり、なにより目を見張るのは極上の音楽表現。
作中でコトが視覚的にとらえる音は、ときに幾何学的文様、ときに抽象画のようで、凡人には垣間見ることのできない世界を描き出します。この世のものと思えないその光景に、漫画表現の持つ潜在性をたしかに感じました。

…ごくたまに「漫画を描くために生まれてきたんじゃないか」、そういった印象を抱く方があらわれます。作者の脇田茜さんはまさにそういう方です。

長らく単行本化を待ち望んでいましたが、2冊同時発売ということで納得。

描きおろしの4コマ、2冊並べるとなお美しい絢爛な表紙と合わせ、まさにマスターピースと呼べる仕上がりに。
コミックリュウ公式サイトやpixivコミックからは、かなりの量が立ち読み可能。気になったらいつでも試聴できます。

音楽、青春、人生…すべてが詰まった、とてつもない熱量を放つ作品です。反発しつつも次第に惹かれ合う、ふたつの魂の交流が圧倒的な筆致で描かれます。
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商品の詳細

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