カスタマーレビュー

2019年11月1日に日本でレビュー済み
謎が謎を呼ぶといえば聞こえは良いが大きな絵も見えない状態で延々伏線張りみたいなものを続けられてもなんだかなあという感じである。先に進むほどパズルの絵が徐々にできあがってく感じもしなくて、ピース数すらわからないパズルのピースだけ適当にいくつか渡されているような。物語の大きな絵があって、そこに向けて伏線が回収されていく、というのが常道だが、本作はそうでなくて、”見えない何か”に向かって伏線を張っているのである。そんなものが面白い筈がない。だから、”今現在”を面白くしなければ読者に訴求しないのだ。
その今現在として、2つの世界が同時進行で描かれるが、それがフォールアウト+アキラみたいなのとネバランみたいなので既視感ありありなのも先への興味を削がれる。ところでああいう施設の靴って全員同じのが支給されてるもんなんじゃないの。識別の為に敢えて違うのを支給してるなら直ぐに個人を特定出来ないとおかしいし。あとこの作者の描くエロは本当にキモい。キャラの年齢とかに関係なく、児童ポルノみたいな、見たらあかんものを見たという気分になって引いてしまう。
…という前巻と殆ど同じような感想を書いたが、もっと根本的な問題として3巻まで読んでようやく、自分は「それ町」が好きなだけでこの作者の作家性が基本的にはあまり受け付けないのだと気付いた。その「それ町」にしても正直、3巻くらいまでは全然おもしろいと思わない。むしろサブカル系スノッブのスカした感じが不快ですらあった。それでも途中から好きになったのは多分、歩鳥とか紺とかのキャラが作者の想定を超えて”動いた”からじゃないかな。思い返せばそれ町もキャラ達が好きだっただけで時系列シャッフルとかの伏線には大して興味なかったし。

一例だけ挙げるけど、それ町の「歩く鳥」って、時系列的には2巻の前後篇のすぐ後なんだよね。あの話の歩鳥と紺の関係が、そう見える?時系列に沿って前後篇のすぐ後にあれ描いて、同じものになったと思う?自分はそうは全く思わない。この間に歩鳥と紺が”動いた”からこそ傑作エピソードになったと思う。それ町が好きで本作も読んでいるという人は、あの漫画が売りにしていた「時系列シャッフル」が具体的に面白さにどれだけ繋がっていたか、とか、最終巻の室伏に与えられた結末を面白いと思ったか、などを考えたらいいのではと思う。

それでこうして本作を読んで、それ町初期の感じこそがこの作者の本来の姿なんだろうなあって思った。「外天楼」とかも話の作りは上手かったけど、読んだところで、キャラに魅力ないから、ああ、よく出来てるねって、それで終わりだったし、本作も長編だけど最終的にはそんなところに着地しそう。日常ものなら、って訳でもない。フルットも新聞の朝刊に載ってそうな毒にも薬にもならない漫画にしか思えないし。
自分には受け付けない作家性とは何かを端的に表現すれば、もしかしたら作者自身が過去に自嘲気味に描いたのかもしれないけど、「駄サイクル」の中心に居る漫画家、というのがしっくりくる。クローズドなサークルで受けてる感じ。それ町だけが偶発的にそこから飛び出しただけでまた戻るところに戻ったと。作者にしてみればそれ町も同じように計算づくで描いていたつもりだろうけどそれは違うと思う。言葉では表現できないところで作者の手のひらを超えてそれ町のキャラたちは動いていたように自分には見えた。自分はそこに惹かれただけだったんだなと遅まきながら気がついた。というわけでこの巻で離脱する。たぶんこの作者の漫画自体今後読まないだろう。

*他のひとがどういうニュアンスで言ってるのかは知らんけど自分が言う「エロがキモい」は、作中の性的表現がどうしたとか、キャラのセクシャリティがああだ、という話では一切なく、「なんかよくわからんけど児童ポルノみたいな、みたらあかんもんのを見たという気分にさせられる」という感覚的なキモさであり、それ町というほのぼの日常漫画に於いて最終巻に収録された話に暗い話が多いのに見られる、作者が内面に抱える自分とは生理的に相容れない感性が可視化されたものの象徴に対して「キモい」と言ってるのであり、本作をこの巻で読むのを止め、2度とこの作者の漫画を読まないと言った一因もそこに繋がっている。
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