カスタマーレビュー

2008年12月4日に日本でレビュー済み
 この短編集の中ではやはりドラマティックアイロニーが秀逸である。そもそもこの作品を理解出来ている人がどれほどいるだろう? これはただ単に善と悪を描いたものではない。この作品は、主人公が漫画を読むところから始まる。この作品の主人公(少年)はドラマティックアイロニーという藤崎竜が書いた漫画の中で、ドラマティックアイロニーという未来の漫画を読んでいるのだ。なぜフジリューはこのような複雑な入れ子構造の漫画を描いたのか? それは世界のアイロニーを描くためである。

 少年が読んでいる漫画、ドラマティックアイロニーの中に登場する剣士は、世界の痛みを自分の痛みに感じ、世界が朽ちていくのと同時に、自らの体もボロボロになっていく。それを読んだ少年はこう思う。(正義の感覚が失われると、世界は闇に覆われちゃうのかな…怖いな)と。普通の漫画ならこれで終わりだろう。しかしこの漫画はそうではない。

 ラストのページがこの漫画の圧倒的に凄いところで、藤崎を天才と呼ぶに相応しいところなのであるが、徐々にカメラワークが遠景になっていく。少年の住んでいる家が映り、少年の住んでいる街が映り、少年の住んでいる世界が映る。その光景は、まさに闇の世界なのである。そう、主人公の少年は、既に荒廃した「闇の世界」に住んでいたのだ。だが、メカニカルな近未来都市の内側に住む少年は、その事実を一切知らないまま、ドラマティックアイロニーを読み、世界について想いを馳せていたのである。

 まさにそれ自体が『ドラマティックアイロニー(劇的な皮肉)』だったのだ。
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5つ星のうち4.7
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