微少コンピュータ「情報材」が道路や建造物、山林の一部にまで遍在して周囲の状況を知覚し、人間の脳には「電子葉」と呼ばれる端末が移植されている「超情報化社会」を舞台に、情報庁高官である主人公が、かつての恩師の影を追ううちに謎の少女に出会い、奇妙な冒険に巻き込まれていく物語。
まあ、ある種のボーイミーツガールであると言えなくもないです(ボーイというには歳くってるけど)。
未来社会の描写や、少女「知ル」が障害と対峙する場面の緊迫感など非常に面白く、一気に読むことができました。
読者の想像に委ねつつ、投げっぱなしにはしないラストも私は好きです。
難点を挙げるとすれば、冒頭、主人公が女の子をヤリ捨てする場面から始まる(相手は水商売の女性とかではなく、「京都の町が育んだ奥ゆかしく楚々とした女性」を、職業上の特権をこっそり濫用して口説き落とし、一夜を共にした、という状況)ので、読者として主人公への好感度がマイナスから始まることでしょうか。
それって、言動が下品じゃないだけで、途中で出てくるヒロインを脱がせようとする悪役とあまり違わないのでは……。
あとまあ、無限の計算力があればあらゆることが予測可能になる、という「ラプラスの悪魔」の発想は、前世紀に否定されています。
まして本作のように、計算力が無限でなく、予測する対象に情報材が含まれていないのであればなおさらですから、一部のシーンはSFとしては詰めが甘いと思います。
そんなわけで、本作を「来たるべき未来社会の課題を描いた作品!」とか持ち上げるのはちょっと難しいと思いますが、娯楽作品として読む分には良いのではないでしょうか。
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know Kindle版
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言語日本語
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出版社早川書房
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発売日2013/7/25
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ファイルサイズ1132 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
超情報化対策として、人造の脳葉“電子葉”の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった―
--このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
野崎/まど
東京都生まれ。2009年、第16回電撃小説大賞においてメディアワークス文庫賞を受賞した『「映」アムリタ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
東京都生まれ。2009年、第16回電撃小説大賞においてメディアワークス文庫賞を受賞した『「映」アムリタ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00FJ1DWH8
- 出版社 : 早川書房 (2013/7/25)
- 発売日 : 2013/7/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1132 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 289ページ
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 78,965位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 300位SF・ホラー・ファンタジー (Kindleストア)
- - 9,913位日本の小説・文芸
- カスタマーレビュー:
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2018年12月23日に日本でレビュー済み
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7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第1章は、設定説明も兼ねた理系寄りの内容。
初っ端のヤリ捨て御免を含め、女とクスリで私生活だらしない主人公の人間性がなんか嫌w
人類は0~6のクラスに分けられ、クラスによって電子葉の能力制限や情報のオープン具合など、そのレベルの差がカーストになっていて、高級官僚や有力家による癒着・既得権益等で情報ヒエラルキーが形成されるのは、どんな近未来になっても人間社会である以上は、世の常なのか……。
とはいえ、世界観からして「これぞSF」といった感じで知的興奮に引っ張られました。
物語は一章終盤、行方不明だった恩師との再会と衝撃的な別れとともに動き出す。
電子葉のスペックを遙かに超える情報処理能力を持つ「量子葉」を実装した「クラス9」の少女・道終知ルを連れて、神護寺、京都御所、進々堂といった京都の特別な場所を巡る旅は淡々と進む。
仏教や日本神話なども取り込んだ哲学的アプローチに加え「知る」ということがどういうことか、文中で語られる考察には、とても深遠なメッセージ性を感じました。
そのいっぽうで「クラス*」の素月と機密情報課による夜襲をはじめ、特殊部隊による待ち伏せと火力にモノを言わせた強硬手段など、少々現実離れした展開が出てきてビックリ。
しかも、それらを難なく一蹴する知ルの力はもはや超能力の閾。
戦闘シーンは読みやすく、すらすらと頭に入ってきたし、量子葉のオーバースペックぶりの描写が見事。
色彩豊かなイメージで抽象的な説明は、存外想像しやすく読みやすい。
けれども、序盤が丁寧なストーリー展開だっただけに、ド派手な動きを盛り込んだ戦闘パートは現実味に欠けるかも。情報処理による未来予測だけでああも計算通りに身体を動かせるものなのか……。話を盛ってる感じがして熱くなれなかった。
旅は終えた二人は「約束の日」を迎え、究極の「知」の探究は特異点を超え、遂には事象の地平線の彼方にまで到達し、少女は世界を変える……。正直、この辺もピンとこないけども、エピローグの、全てが集約された最後の1行は秀逸だったし、作品のテーマからして「know」というタイトルも、これしかない感がしてピッタリだと思う。
しかし14歳の中学生を手に掛けるとは……けしからん。
先生は自殺する必要あったのか?とか、御野と知ルが以前一度だけ会ったことがあるというのも謎だし、細かいアラもあるけども、読み応えがあるSFでした。
にしても三縞副審議官、ストーリーとは何の関係もないのに、最後まで食い下がってくるw
初っ端のヤリ捨て御免を含め、女とクスリで私生活だらしない主人公の人間性がなんか嫌w
人類は0~6のクラスに分けられ、クラスによって電子葉の能力制限や情報のオープン具合など、そのレベルの差がカーストになっていて、高級官僚や有力家による癒着・既得権益等で情報ヒエラルキーが形成されるのは、どんな近未来になっても人間社会である以上は、世の常なのか……。
とはいえ、世界観からして「これぞSF」といった感じで知的興奮に引っ張られました。
物語は一章終盤、行方不明だった恩師との再会と衝撃的な別れとともに動き出す。
電子葉のスペックを遙かに超える情報処理能力を持つ「量子葉」を実装した「クラス9」の少女・道終知ルを連れて、神護寺、京都御所、進々堂といった京都の特別な場所を巡る旅は淡々と進む。
仏教や日本神話なども取り込んだ哲学的アプローチに加え「知る」ということがどういうことか、文中で語られる考察には、とても深遠なメッセージ性を感じました。
そのいっぽうで「クラス*」の素月と機密情報課による夜襲をはじめ、特殊部隊による待ち伏せと火力にモノを言わせた強硬手段など、少々現実離れした展開が出てきてビックリ。
しかも、それらを難なく一蹴する知ルの力はもはや超能力の閾。
戦闘シーンは読みやすく、すらすらと頭に入ってきたし、量子葉のオーバースペックぶりの描写が見事。
色彩豊かなイメージで抽象的な説明は、存外想像しやすく読みやすい。
けれども、序盤が丁寧なストーリー展開だっただけに、ド派手な動きを盛り込んだ戦闘パートは現実味に欠けるかも。情報処理による未来予測だけでああも計算通りに身体を動かせるものなのか……。話を盛ってる感じがして熱くなれなかった。
旅は終えた二人は「約束の日」を迎え、究極の「知」の探究は特異点を超え、遂には事象の地平線の彼方にまで到達し、少女は世界を変える……。正直、この辺もピンとこないけども、エピローグの、全てが集約された最後の1行は秀逸だったし、作品のテーマからして「know」というタイトルも、これしかない感がしてピッタリだと思う。
しかし14歳の中学生を手に掛けるとは……けしからん。
先生は自殺する必要あったのか?とか、御野と知ルが以前一度だけ会ったことがあるというのも謎だし、細かいアラもあるけども、読み応えがあるSFでした。
にしても三縞副審議官、ストーリーとは何の関係もないのに、最後まで食い下がってくるw
2019年12月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
僕が野崎さんの作品を知ったのは、アニメーションとして放映された『正解する̚カド』だったのですが、
ほぼ同じ読後感(視聴感)です。今後、僕たちが直面する情報社会のオルタナティブとしてはあり得る
世界だと思います。なぜなら、身体への直接接続をするかは別として、メディア/情報技術の発展は、
基本的には自分の論理的/数的処理を外部化していくという歴史だからです。
その意味で設定は美味いです。ただ、上がり方がそれで良いのかというのは疑問です。『正解するカド』
は明らかに、設定を論理的に帰結させようとしているのであれば失敗だったと思うのですが、そこまでは
おかしくないし、それまで挟んできたエピソード自体は伏線として回収されているのですが、「知る/know」
の根源への到達の仕方としては、いささか疑問が残る部分もあります。最近は『バビロン』も物議を醸している
ようですが、全般的に幕の下ろし方は丁寧とまではいえず、いつも通りという印象です。
SFとしては、いわゆる名作と言われているものの方が、読後感としては充実するかな。少しライトな日本語SF
としても、長谷敏司さんなんかの方が僕は好みでした。
ほぼ同じ読後感(視聴感)です。今後、僕たちが直面する情報社会のオルタナティブとしてはあり得る
世界だと思います。なぜなら、身体への直接接続をするかは別として、メディア/情報技術の発展は、
基本的には自分の論理的/数的処理を外部化していくという歴史だからです。
その意味で設定は美味いです。ただ、上がり方がそれで良いのかというのは疑問です。『正解するカド』
は明らかに、設定を論理的に帰結させようとしているのであれば失敗だったと思うのですが、そこまでは
おかしくないし、それまで挟んできたエピソード自体は伏線として回収されているのですが、「知る/know」
の根源への到達の仕方としては、いささか疑問が残る部分もあります。最近は『バビロン』も物議を醸している
ようですが、全般的に幕の下ろし方は丁寧とまではいえず、いつも通りという印象です。
SFとしては、いわゆる名作と言われているものの方が、読後感としては充実するかな。少しライトな日本語SF
としても、長谷敏司さんなんかの方が僕は好みでした。
2018年11月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
SF名作の一つに数えられるアーサー・C・クラークの『幼年期の終り』と似たテーマを扱っていると感じました
いろんな人物の「もっと知りたいんです」という言葉で終わる節が多いことからも読み取れるように
知性にとって「知ることは生きること」だという重厚な命題に真摯に向き合った作品です
それが軽快で引き込まれる物語とともに語られているのがこの作品のすごいところ
単なるライトノベルのつもりで読み始めましたがとんでもない作品でした
いろんな人物の「もっと知りたいんです」という言葉で終わる節が多いことからも読み取れるように
知性にとって「知ることは生きること」だという重厚な命題に真摯に向き合った作品です
それが軽快で引き込まれる物語とともに語られているのがこの作品のすごいところ
単なるライトノベルのつもりで読み始めましたがとんでもない作品でした
2020年7月30日に日本でレビュー済み
比較的軽いタッチな文体で書かれており、表現を理解することが可能な範囲内のSF作品。
内容としては”炎の剣が輪を描いて回る時”を求めていく物語、かな。
Amazonで購入
超情報化された2081年の日本・京都が舞台。
比較的軽いタッチな文体で書かれており、表現を理解することが可能な範囲内のSF作品。
内容としては”炎の剣が輪を描いて回る時”を求めていく物語、かな。
比較的軽いタッチな文体で書かれており、表現を理解することが可能な範囲内のSF作品。
内容としては”炎の剣が輪を描いて回る時”を求めていく物語、かな。

5つ星のうち5.0
面白い!!
ユーザー名: Simulated reality、日付: 2020年7月30日
超情報化された2081年の日本・京都が舞台。ユーザー名: Simulated reality、日付: 2020年7月30日
比較的軽いタッチな文体で書かれており、表現を理解することが可能な範囲内のSF作品。
内容としては”炎の剣が輪を描いて回る時”を求めていく物語、かな。
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