微少コンピュータ「情報材」が道路や建造物、山林の一部にまで遍在して周囲の状況を知覚し、人間の脳には「電子葉」と呼ばれる端末が移植されている「超情報化社会」を舞台に、情報庁高官である主人公が、かつての恩師の影を追ううちに謎の少女に出会い、奇妙な冒険に巻き込まれていく物語。
まあ、ある種のボーイミーツガールであると言えなくもないです(ボーイというには歳くってるけど)。
未来社会の描写や、少女「知ル」が障害と対峙する場面の緊迫感など非常に面白く、一気に読むことができました。
読者の想像に委ねつつ、投げっぱなしにはしないラストも私は好きです。
難点を挙げるとすれば、冒頭、主人公が女の子をヤリ捨てする場面から始まる(相手は水商売の女性とかではなく、「京都の町が育んだ奥ゆかしく楚々とした女性」を、職業上の特権をこっそり濫用して口説き落とし、一夜を共にした、という状況)ので、読者として主人公への好感度がマイナスから始まることでしょうか。
それって、言動が下品じゃないだけで、途中で出てくるヒロインを脱がせようとする悪役とあまり違わないのでは……。
あとまあ、無限の計算力があればあらゆることが予測可能になる、という「ラプラスの悪魔」の発想は、前世紀に否定されています。
まして本作のように、計算力が無限でなく、予測する対象に情報材が含まれていないのであればなおさらですから、一部のシーンはSFとしては詰めが甘いと思います。
そんなわけで、本作を「来たるべき未来社会の課題を描いた作品!」とか持ち上げるのはちょっと難しいと思いますが、娯楽作品として読む分には良いのではないでしょうか。
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