医療に関わるというか、日本のほぼ全ての人々がそうなのだが、政治に無関心で生活は送れない。
しかし、政治的発言をすることでのバッシングを恐れるのか、自粛というか萎縮する人々は少なくない。
医療者であれば、その最大の集団である日医が長年与党偏重であったことで、政治批判はタブーなクウキが蔓延している。
そんな中、私も常に情報を受けている数少ない医療者の一人として著者がいる。
医師が医療批判を行うのは、自らの業界団体に唾することでもあるので、どんな職種の方もし難いと思うが、医師は全ての人々の命を預かるとの理念に沿って著者は発言を行う。
それは、自らの旅や、故若月医師の教えである生活の中に入る医療を行っている経験からくるものだろう。
医師や教員、法曹３者、官僚などの殆どが、純粋培養されて職につくが、それで人々の生活が分かり、その生活に合致した仕事ぶりができるのか？
そうでないからこそ生活者との乖離が生まれ、職業人の一人歩き的政策が生活者に押し付けられているのではないか？
著者も医師に関して、一旦社会人経験をしてから職に就けと提言する。
それが生活者である患者さんの目線での医療を提供する事であり、少数の“神の手”でなく、多数の家庭医の方が、全体には有益であるとの意見にも結びつく。
本書には、ＮＰＯ法人ささえあい医療人権センターＣＯＭＬの辻本好子・理事長への追悼記事がある。
彼女は「医者にかかる10ヵ条」を掲げて、「患者学」を広めていった方だが、
1 伝えたいことはメモして準備
2 対話の始まりは挨拶から
3 よりよい関係作りはあなたにも責任が
4 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
5 これからの見通しを聞きましょう
6 その後の変化も伝える努力を
7 大事なことはメモを取って確認
8 納得でできない時は何度でも質問を
9 医療にも不確実なことや限界はある
10 治療方針を決めるのはあなたです
との「10ヵ条」を医療者の立場から発信できる医師がどのぐらいいるのだろうか？
医師や看護士は、パターナリズムにあふれた「ヒポクラテスの誓い」に触れる機会はある。
しかし、一般企業なら当たり前にある「顧客満足度」なる言葉に触れることはないだろう。
もしそれがあったとしても、「患者様」との呼び名に変える程度の事で、オーシャンフロントの病室や豪華な病院食が、患者さんに向き合った医療提供であろうか（亀田の家庭医研修プログラムは評価できるとしても）？
本書は、日経メディカルブログでの連載の再録である。
私も情報を得ているが、当該ブログは医療者向けなので、ログインしなければ全文は見られない。
その意味では、広く一般の患者さんを含めた読者に読まれたい、まっとうな医師の談話であるし、サイトを見ている医療者にとっては苦々しい意見もあろうが、自分の仕事や生きかたへの振り返りとして有益なものであることは間違いない。
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